TROPHY BLACKS

A Report On Australia's Dead-Bait Fishery

オージー流
ブラックマーリン・
メソッドの全貌

山本光平


フィッシングのメソッドは、場所により、ボートにより、また対象魚やエサによって全て変化する。
ここでは、私たちのチームのグランダー達成を可能にしてくれた、グレート・バリア・リーフの雄<カマリ>号とそのキャプテン、ジェフ・ファーガソンのメソッドをご紹介しよう。


ブラックマーリン・フィッシングの概要

 リザード・アイランド周辺におけるブラックマーリンのベストシーズンは、9〜11月である。この時期のブラックは小さいもので100ポンド(45kg)。大きいのはもちろん1,000ポンド以上のグランダー狙いとなる。200〜600ポンドクラスが一番多いようだが、当然その日の運と海況次第である。


リザード島からリーフを出るまでに釣ったクィーンフィッシュなどをさっそくデッドベイトにする。
 対して、ベイトにする魚は、リーフの外にいるカツオをライブベイトとして使用し、リーフ内のクィーンフィッシュ(現地ではラージマウス)、スパニッシュマッカレル(タンギギ)、レインボー(ツムブリ)の3種はデッドベイトとする。
 このうちベストなのはやはりカツオのライブベイトで、ストライクのとりやすさ、喰い込みの良さでは安定している。しかしパヤオ(FAD)を設置していないので、ナブラがなければ全く手に入らない。しかし朝は、リザード島からリーフを出るまで、デッドベイト用に漁師よろしく手釣りで5匹くらい、運が良ければ50〜60匹は入手可能である。
 さて、メイト(クルー)はヒマな時間にせっせとベイト作りに精を出すはずなので、ちょっと手伝わせてもらえばベイト・リギングはすぐに覚えることができる。別図1を参考にして欲しい。

 一方、タックル類は130ポンドタックル・オンリーと考えて良い。その理由は、グランダーの可能性もさる事ながら、何と言ってもシャーク対策である。もちろん、あくまでライトタックルで狙うのも自由だが、たかだかベイト釣りでもすぐにサメが寄って来る所なのだ。シャークバイトにビクビクしながらでは、本来の釣りの楽しみが半減してしまうこと必至である。
 ちなみに<カマリ>では、この130ポンドを2本だけ使用している。両舷ともアウトリガーを使い、右舷は40mくらい後方にスイミング(デッド)ベイトを、そして左舷は25mくらい後方に、スキッピング(デッド)ベイトを流すのが通常のパターンで、ラインワークはWラインが3〜3.5mくらい、リーダーは全長で5〜6mくらいで、別図2のような構成の針金(スティール)である。もちろん、IGFA規定をクリアしている。フックはスティールの14/0〜17/0クラスを1本づけとする。
 さて、以上がおおよその概要であるが、現地ではオーストラリア流のフリースプール・テクニックにずいぶん混乱してしまった。8回連続、バラシにつぐバラシの嵐! しかし、「郷に入れば郷に従う」をモットーとする我がCATSチームは最終的にはオージー流フィッシングによるビッグゲームを堪能することができた。


ストライクまでの展開について

a:ハーネスとチェアー

 ハーネスは一般的に“ツナハーネス”と呼ばれるヒップタイプを使用する。その利点は、チェアーのフットレストをフルに使用し、全身の体重をかけてポンピングを助けるのが可能なことだ。500ポンドを超えるマーリンのジャンプとダイブはさすがにダイナミックで、対抗するには渾身のパワーが必要となる。もしもショールダーハーネスを使ってしまうと、ハーネスが絞り込まれ、肺が強力に締めつけられる。その結果、充分な呼吸ができなくなり、ファイトに支障をきたしてしまう。
 一方、<カマリ>のファイティングチェアーは典型的なオージー・タイプだった。オーストラリア製の「プリシジョン」や「ケブラーキャット」等のボートに装備されている、サイドロッドホルダーの位置が高い、あの手のタイプである。なぜこの位置でなければならないのか、理由は今もって不明だが、実際の使用では、ストライク持ちの時、リール・ポジションが当然、若干高くなるが、USタイプに比べてリールが体の近くにある分、フリースプールのコントロールは容易となる(後で詳しく解説したい)。

b:ベイトのセッティングについて
 セッティングについては、リグとして用意する段階と、ストライクの為のセッティングに大別される。
 リギングとしてはデッドベイトを多用するので、「スイミングベイト」と「スキッピングベイト」について述べてみよう。



大型のタンギギ(TANGUIGUE)等は、スキッピング・タイプのデッドベイトとして使用する。
 スイミングベイトは、読んで字の如く「泳ぐエサ」のこと。デッドベイトなのに泳ぐ? まるでゾンビだが、その上手下手がデッキハンドの力量の差となる。一般的には、ディボーナーを使って骨抜きをしたり、背骨を折ったりしてユラユラと弱った魚の動きを演出する。しかし<カマリ>では、骨には一切手を加えず、シンカーも余り使わずにこの演出を実現している。多分にアウトリガーからの距離調整と、曳き波、操船テクニックとの併用で行なっていると考えられるが、これが<カマリ>の総合的なポテンシャルの高さにつながっている。作り方は別図(1)の通りで、このスイミングタイプは右舷のアウトリガーからロングに出す。
 一方、スキッピングベイトはカツオの3〜10kgクラス、あるいはタンギギと呼ばれるサワラの類を使う。簡単に言えば、少し丸っこい魚や大きい魚をパシャパシャと水面をはねるように曳いて、ティーザーの役目を兼ねさせる手法である(別図3)。


 さて、どちらのベイトが有効かは一回の釣行では判断できなかったが、別表Aのように、興味深い結果が得られた。まず、チェイスして来て、しかもストライクしなかったカジキは全てスイミングベイトだった。様子を見に来て見抜かれてしまったのかもしれない。またバラクーダに持って行かれたのも全て遠くにセッティングしたスイミングベイトで、ストライク数は7匹だった。

(別表A)ベイトの種類とカジキのアクション

表中の数字はカジキの重量。ただしランディングしたもの以外は全て推定重量。

 一方、カジキについてはチェイス5回(実際にはもっとあったかもしれない)で、ストライクしたカジキはスイミングが遠方で、しかも水中にあった為、大きさは推測不可能だった。ショートアウトリガーのスキッピングベイトについては、近くの水面にあるのでカジキのサイズは全て推測でき、100〜800ポンドクラスがストライクしている。またファイト中のバレについては、スイミングベイトが4匹でスキッピングベイトは0だった。
 私の見る所では、フックのセッティング方法とフックアップには関係があると思われる。つまりフックが全部露出している方が呑み込ませた後のかかり具合が良いのではないかと、少ないデータではあるが判断している。ランディング数そのものは3匹対3匹で、サイズも余り変らない結果となっている。


キャプテン、ジェフ・ファーガソンの愛艇<カマリ>は、オーストラリア最強のチャーターボートにランクされる。
 一般によく言われる「ブラックマーリンはルアーでフックアップしにくい」という説は、表で見る限り本当のようだ。実際、<カマリ>でもルアーは一時間ほど試し曳きした程度だった。ただし、私のデータには例の“バラシの嵐”が含まれている。ルアー曳きと違い、ストライクの瞬間から自分で仕掛ける釣りなので、どの時点をもって“ファイト”に数えるかは意見の分れる所だが、私達は「フックアップ後、ハーネスをかけてリールを巻いたらファイト」と今回は規定していた。その中で、フリースプールのテクニックがよくのみこめず、不完全なフックアップになってしまったケースがかなりあったので、ショートアウトリガー(スキッピングベイト)のストライクは本来ならもっと良い結果だったのかもしれない。一応1回限りのデータ分析として参考程度にしていただきたい。

c:ストライク直後の対応について
 まず、オーストラリアのブラックマーリン釣りにはオーストラリア流のやり方があることを確認してほしい。具体的にあげると

1. ダウンリガーを使用しない。これはリーフ沿いで水深が浅いことと、これだけのストライクがあれば単純に不要ということなのだろう。
2. ドロップバック量は少ない。ジェフ・ファーガソンによると、ブラックとブルーは捕食パターンが違うとのこと。ハワイでは、ドラッグはストライクポジションのまま、ドロップバックを40ft以上と長くとるのが普通だ。しかし、これはブルーマーリンの釣り方だとジェフは言う。理由は、ブラック、特に大型はブルーほどナーバスでなく、いきなり喰うパターンが多く、フリースプールを有効に使って呑み込ませる方が、絶対的にフックアップ率が高いため。また一説には、ブラックは捕食時に胃袋の中に何も入っていないことが多く、変なテンションがかかるとすぐに胃洗いしてしまうから、とも言われている。
 とにかく、私のように「ハワイで慣れている」等といった変な自信や先入観はここでは通用しない。何回でも納得するまで聞いて、ストライク直後のフリースプールとドロップバックの関係について理解しておかなければならない。この釣行でグランダーとなった井上氏はオーストラリアに来るまで1本、ハワイでブルーを釣っただけで、むしろ白紙状態で釣りをしたのが好結果に結びついたわけで、自称ベテランほど注意が必要と言えよう。

最後の最後までファイトを続けるブラックマーリン。写真のブラックは小型サイズながら、そのパワーの持続には目を見張るものがあった。

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