DON MANN
BIG GAME TECHNIQUES & TIPS

ドン・マンの
ビッグゲーム・テクニック(6)

Choosing and Rigging Offshore Lures
オフショアルアーのリギングと選択

写真・文/ドン・マン
訳・構成/編集部


オフショアのビッグゲームトローリングに関しては、日本はまだまだ発展途上にある。アメリカやオーストラリアなどのスポーツフィッシング先進国からタックルやイクイップメントのハード類は豊富に輸入されているものの、その使い方や細かなテクニックといったソフトの部分となると依然として窮乏している。ルアーひとつ取ってみても、その種類やカラーの豊富さのために、かえって混乱しているのが現状である。しかし、アメリカでもこういった状況はそれほど変わるわけではなく、ルアーのリギングと選択に関する法則はないものかと摸索しているのである。

「K.I.S.S. principle」

 釣り人をひとつの企業にたとえるなら、すべての一流企業が必ず守っている成功の秘訣「キスの原則」を無視する2流どころということになるだろう。「キスの原則」すなわち「K.I.S.S.」は「keep it simple, stupid」のこと。「単純に分かりやすくしろ」といいう意味だ。ルアーのリギングやチョイスに関してこれほど的を得た言葉はない。
 長年の間、私はフレッシュウォーターの兄弟たちが巨大なタックルボックスを開けて20段はあろうかという引き出しの中からたったひとつのルアーを選び出す作業を畏敬の眼差しをもって眺めてきた。いざルアーを選び出す段になると、電気仕掛けの小道具をおもむろに持ち出し、そいつに水色や天候、月齢といった情報をインプットしてお伺いを立てる族までいる。さらにフライフィッシャーマンがそのボサボサの捧げ物の選択に苦悩している様に至っては、崇高な聖者が自らの行いを善悪の天秤にかけて頭悩ますといった厳かな雰囲気さえ漂う。

 ところが、オフショア・フィッシャーマンたちはどうだ。我々は最近になってようやくフレッシュウォーターの兄弟たちが実行している複雑な作業の迷宮に一歩足を踏み入れたにすぎない。デッドベイトから始まったオフショアのビッグゲームフィッシングは、今まさにルアーの時代を迎えようとしている。フレッシュウォーターと同じく、この世界においてもルアーの選択やリギングに頭を悩ませるアングラーが少しずつではあるが確実に増えつつあるのだ。そんなアングラーをさらなる混乱に導いているのが、現在、市場に氾濫する無数のルアーと、リギングに関するアドバイスの数々である。
 この混乱の泥沼状態から脱出するための唯一の法則が「K.I.S.S.」である。「stupid」という単語はどうも好きになれないので、よりシンプルに「keep it simple」のほうがいい。

 何しろ、ルアーの選択やリギングがやたらと複雑になってしまえば、この釣りはもはや遊びの域を越えてしまう。ほとんどのオフショアアングラーにとって、「分かりやすくシンプルにすること」は興味を持続させるためにも不可欠な鉄則なのである。さて、屁理屈はこれくらいにして、実際にどのくらい「分かりやすくシンプルにすること」ができるか調べてみるとしよう。

1. モノワイヤーのシングルフックリグ。2. ケーブル利用のダブルフックリグ。90度フィックス(固定式)。リードフックの固定にゴム管を使用。3. モノフィラのダブルフックリグ(180度フィックス)。中央のプラスティックはラトラー。4. 2と同じだが、セカンドフックの結び方に注目。5. モノフィラのシングルフック。

オフショアルアーのリギングとは?

 ルアーをリギングしようとする場合(ここで言うルアーとは、もちろんプラグやスプーンなどのようにフックが初めから付いているものは除く)、まず最初に決めなければならないのはフックの数である。
 フックの数:1. シングルフック
       2. ダブルフック
フックの次はリーダーマテリアルだ。これには3つの選択肢がある。
 リーダーマテリアル:
  1. シングルストランド・ステンレススティール・ワイヤー(単線ワイヤー)
  2. モノフィラメント
  3. ツイステッド・ワイヤーケーブル(ブレイデッド・ワイヤーとも言う)
ダブルフックにする場合には、モノフィラメントかツイステッド・ワイヤーケーブルのどちらかということになる。モノフィラなら、スリーブを使うかフックに直接結ぶかしてつなぐ。ワイヤーケーブルなら、2つのフックをつなぐ前に、フリースウィング(首振り。フックが自由に動く状態)にするかスティフ(固定式)にするかを決める必要がある。以上がリギングに関する選択のすべてだ。この他にもアレンジパターンがあるにはあるが、「キスの原則」に従う限り、この際、無視してもかまわないだろう。

リーダーマテリアル

 では、これらのリグをどう使い分ければよいのか? まずリーダーマテリアルから考えてみよう。
 最近では、オフショアで狙うほとんどすべての魚種(ビルフィッシュを含む)にモノフィラメントが使われる。モノフィラはリーダーをラップする時などにも扱いやすく、非常に強力で、魚を脅かすほど目立たない。唯一の例外は歯の鋭い魚を狙う場合で、その時にはワイヤーリーダーが使用される。具体的には、キングマッケレルやワフー、バラクーダなど。もしもこれらの魚を専門的に狙うつもりなら、リーダーにはシングルストランド・ステンレスワイヤーを使うべきだろう。ただし、これらの魚を専門に狙うわけではなく、あくまでもサブターゲットにすぎないのなら、モノフィラリーダーでもよいだろう。口の前側にフックが掛かっていれば、歯はリーダーまで届かない。フックシャンクや、フックとフックをつなぐワイヤーやケーブルに歯が当たっても、リーダー自体に影響がなければ安全である。
 最近はケーブル(ツイステッド・ワイヤーケーブル)をリーダーマテリアルとして使うことは滅多にない。使い方としては、ダブルフック・リグの場合にフック同士をつなぐために用いるというのが最も多い。

フックの数

 リーダーマテリアルの次に決めなければならないのは、フックの数である。シングルフックにするのか、ダブルフックにするのか。これもまたリーダーと同じく、狙う魚種に応じて選べばよい。ツナの仲間やドルフィン(シイラ)を狙うならシングルフック。ダブルフックはショートストライクで悪名高いビルフィッシュ用である。つまり、ベイトやルアーのテイルをちぎり取っていくようなタイプの魚を釣る場合にダブルフックを使うのだ。
 さて、ちょっとここでおさらいしよう。たとえば、トローリングルアーでワフーを狙うとする。ショートストライクという点では、ワフーやキングマッケレルは有名だ。そこで、これらをルアーで狙う時には、ダブルフック・リグにして、さらにリーダーにはワイヤーを使う。simple? simple!
 だが、ビルフィッシュにダブルフックを使うことに異議を唱えるアングラーも多いと思う。なぜなら、ビルフィッシュはエサを頭から飲み込むケースが多く、ダブルフックにリギングしたルアーを使っていても、フック・アップするのはたいていリードフック(前側フック)だからだ。しかし、セカンドフックには「保険」としての役割がある。実際にフックアップする時点では機能しなくても、ファイト中にセカンドフックがフックアップすることがあるからだ。たとえば、リードフックが上アゴに掛かっている時などに、セカンドフックが下アゴに掛かる確率は高い。もしもフリースウィングにリギングしてあれば、口以外の部分にも掛かるだろう。いずれにしろ、セカンドフックはトロフィーキャッチを逃さないための大事な保険として機能するわけである。


一見複雑そうに思えるトローリングルアーのリギングだが、こうして体系化すればいたってシンプル。表の見方は次のとおり。たとえばシイラ(ドルフィン)がメインターゲットの場合、鋭い歯はないので、リーダーはモノフィラでOK。また、ストライクも派手なので、シングルフック(外す時の面倒もある)で充分となる。

ダブルフック・リグ

 さて、ダブルフック・リグだが、2つのフックをつなぐためのマテリアルに関しては大きく意見が分かれるところだ。モノフィラメントを直接フックに結ぶか、あるいはワイヤーケーブルをスリーブで止めるかが最も多いリギングだが、主流は後者である。
 しかし、こういったマテリアルに関する異論反論よりも、スティフ・リグ(固定式)にするかフリースウィング・リグ(首振り式)にするかのほうが大きな問題かもしれない。フリースウィングであれば、保険としてのセカンドフックの効果は高まるし、スティフ・リグであれば、フックの向きを任意の角度に設定してフックアップ率を上げることができるのだ。

ルアーのヘッド形状は、トローリングスピードに応じて替えるのが基本。そしてスカートカラーは? 本文参照。

 スティフ・リグにするためのフックの固定法は様々で、木製やらステンレススティール製やらの棒から極太のワイヤーケーブルまで実にバラエティに富んでいる。しかし、私自身は「K.I.S.S.」の原則に従って、極太のワイヤーケーブルをスリーブで止め、半インチのゴム管で固定するというシンプルな方法を好んで使っている。適切な方法でスリーブをクリンプ(潰す)していれば(ペンチ等ではなく、ちゃんとクリンパーを使うということ)、これに勝る接続法はない。9/0以下のフックには400〜500Lbテストのケーブルワイヤーを使い、それ以上大きなサイズには600Lbテスト以上のケーブルを使う。たしかに、ワイヤーケーブルはスティール製の棒のようにしっかりとはしていないが、充分に固定することができる。使用するケーブルのサイズに合ったスリーブ(アルミまたは銅製)を使うことが大切だ。(注:IGFAレコードを狙うつもりなら、リードフックのベンドがセカンドフックのアイに重ならないようにリグすること。それがルールだ)

シングルフック・リグ

 話をシングルフック・リグに移そう。シングルフックでモノフィラメント・リーダーを使う場合もまた、フックとの接続にはやはりスリーブをクリンプするか、直接結ぶかのどちらかになる。また、シングルフック・リグでは、ルアースカート内の適切な位置にフックをセットすることが必要となる。その方法としては、スリーブやエッグシンカー(ガン玉のような鉛のオモリ)をリーダー(フックアイの上部)に付けるなどがある。それは単にフック位置だけの問題ではなく、クセのついたリーダーをまっすぐに伸ばすためでもある。スリーブやエッグシンカーの他にも、ルアーヘッドとフックの間にビーズを通してフック位置を調節するという方法もある。
 シングルフック・リグにシングルストランド・ステンレスワイヤーを使用する場合は、ヘイワイヤーツイスト(編集部注:当ウェブ第3章「フィッシングノット」参照)でフックに接続する。フック位置の固定にはビーズを使ってもいいし、固定位置までヘイワイヤーツイストを伸ばしていってもいい。
 先述したように、シングルフック・リグではフックがルアーのスカート内に隠れていることが大切で、少なくともフックのベンドがスカートの先端と同じでなければならない。アメリカ西海岸のハイスピード・トローラーたちのリグには、シングルフックがスカートからはみ出したものを見かけるが、こういったリグは他では一般的ではない。


リギングに必要なマテリアルと工具類。リギングで一番厄介なのは、やはりフックとの接続だろうか。接続には、モノフィラメントにしろワイヤーケーブルにしろ、スリーブがよく使われるが、適切なサイズのスリーブを使うことが大切。スリーブを潰すためには、プライヤーなどではなく、専用のクリンピングツールを使うこと。1. デンタルフロス。2. ツイステッド・ワイヤーケーブル。3. 綿棒。4. ビニールチューブ。5. モノフィラメント。6. クリンピング・ツール(プレッサー)。使用するスリーブのサイズに応じたものが必要。7. スイベルなどの小物類はケースに整理すると便利。

ルアーシェイプ

 ルアーのシェイプもまたアングラーを混乱させる要素のひとつと言えるだろう。巨大なゲームフィッシュ、特にマーリンを狙ってトローリングする時などは、そのあまりにもたくさんの種類に圧倒され、どれを使おうかと悩んでいる間に日が暮れてしまうことさえある。だから、そうならないために、すべてのルアーはその適合トローリングスピードに応じて2つのカテゴリーに分けられるということを覚えておいてほしい。

 まずひとつは時速8マイル以下のトローリングスピードが適しているもの、もうひとつはそれ以上(時速8〜10マイル)のスピードが適しているものだ。前者はディッシュド・フェイスなどのスイミングルアーに代表されるタイプで、ライブベイトを使う時のようなスロースピードでもしっかり「スイミング」するルアーである。一方、時速8マイル以上のトローリングスピードでは、コンケイブフェイスやフラットフェイス、またフェイス面に傾斜のあるタイプなどが適している。いずれのタイプも時速10マイルの高速でトロールしても激しいバブルとルースターテイルを生み出す。これ以上の超高速に向いているのが先細り型のポインティーヘッドや流体力学の賜物「ドアノブ」などである。これらはより広範な海域を探る時に効果的だ。

モノフィラメントリーダーの場合、スリーブで留めた先端のループ部は傷みやすい。保護のために、様々な処理がループ部に施されるが、代表的なのはビニールパイプやスプリングをループに通すという方法。

 しかし、このような使い分け方をしても、適切なルアーの選択にはまだまだ難行を極めるかもしれない。たしかに、これらのルアーをすべて持っていなければならないというわけではないのだ。事実、私はほとんどの釣行には2〜3種のルアー(それぞれの種類をサイズ違いで2つ持っていく)しか持っていかない。スロースピード用に大口径のフラットヘッド・コンケイブフェイスハイスピード用に小口径のティアドロップ・コンケイブフェイスである。この他にフェイス面にホール(穴)のあるただのフラットフェイスを持っていくこともある。これは時速10マイル以上の超高速用である。

ルアーカラー

 ルアーシェイプが「混乱」の種なら、ルアーカラーはほとんど「混沌」の世界と言えるかもしれない。もしもそれぞれのルアーシェイプとサイズに全てのカラーバリエーションを組み合わせようと思えば、何よりもまず最初にそれらを運ぶための巨大なトランクが必要になる。しかしながら、幸いなことに何十色というスカートを持ち歩く必要はまるでない。本当に必要なスカートカラーはほんの2〜3色にすぎないのだ。オフショアトローリング用に私が使っているスカートカラーはたったの3パターンである。ブルー&ホワイト、ブラック・オーバー・オレンジ(またはピンク)、ブラック・オーバー・ブルーだ。


ルアーによるビッグゲームフィッシングは究極の挑戦。自分でリギングしたルアーならエクスタシーはさらに増幅される。
 たしかに世界各地域には「これぞ絶対!」といった特別な色なりパターンなりがあるものだ。だが、もしもそれらすべてに耳を貸していたら、ルアーの支払いのために家を抵当に入れる羽目になる。たとえば、上に挙げた私のカラーパターンを見たニュージャージーのアングラーはこう叫ぶはずだ。「What, no green lures?」。かと思えば、ツナが多いサザン・カリフォルニアでは「レッド&ホワイト」の雄叫びが響く。さらに、ピンク&ホワイトがバハマで騒がれる一方で、カリブ海のワフー・スペシャリストたちはワインレッド&ブラックをイチ押しする。となると、ドルフィン・アングラーが黄色のルアーを家に置いたまま釣りに行くことなど考えられない。つまり、このテの話はまったくもって切りがないのだ。経験を積んだアングラーなら誰だって自分なりの好みがあるはずだし、エキスパートと呼ばれる人は皆、「特別な」ルアーやカラーを持っているものだ。それにもちろん、特定のカラーを好む魚種もたしかにいる。だが、タックルショップを丸ごと買い取ってしまうようなことはできないし、また、する必要もないのだ。
 たとえば、ミディアムサイズのゲームフィッシュ(シイラやマッケレル、ワフー、小型のツナなど)を狙うのなら、よりシンプルで安い方法もある。鉛のヘッドがついたフェザージグを買うのだ。レッド、ホワイト、イエローのものを各サイズ揃えて、ワイヤーリーダーとシングルフックでリグする。これは元々日本でのみ作られていたことから「シャパニーズフェザー」と呼ばれているが、現在ではアメリカの製品もあり、Kマートからスノッブなタックルショップに至るまで、どこでも手に入る。

 しかし、ビルフィッシュなどのビッグゲームを狙うなら話は別だ。前述したようなトローリング・ルアーを買い込まなければならない。とはいえ、先ほども言ったように、全サイズ、全カラーを持ち歩く必要はない。

まとめとして

 問題なのは、いわゆる「アタリルアーとか実績のあるルアー」というものが人々の間に広まる過程なのだ。たとえば、ある日サムがピンク&パープルの某ルアーを使いビッグフィッシュをキャッチしたとする。すると、そのルアーは瞬く間に「実績のあるルアー」になってしまうのだ。だが、ひょっとすると、そのビッグフィッシュはブルー&ホワイトの別のルアーでも釣れたかもしれないのだ。たまたまサムが使っていたルアーがピンク&パープルの某ルアーだったという事実だけで,「アレはビッグフィッシュに効く」とう結論が生まれてしまうのである。

 これには私のようなライターにも責任の一端がある。あのトーナメントではこのルアー、あのワールドレコードにはこのルアーといったぐあいにいちいちレポートしてしまうのだから。読者がそれらを次々に買い込み、タックルボックスにためこんでいったとしても無理もない。

対象魚種によっては、このフェザージグが効果的。重さの異なるジグヘッドと羽根の色を組み合わせれば、ほとんどのシチュエーションに対応できる。そのうえ安い!


 しかし、そんなことをしなくとも、基本的なカラーパターンのルアーを数種トローリングして、それらが魅力的なバブルトレイルを引いているのなら、そのままにしておくことだ。そしてルアーの選択とリギングの際には「Keep It Simple!」をお忘れなく! それを忘れては、それこそ「Stupid」だ。

筆者紹介/ドン・マン(Don Mann)
アメリカのビッグゲーム・シーンを語る時には欠かせないライター&フォトグラファー。ただ傍観者として関わるのではなく、自らもロッドを握る。アメリカでは非常に名の知れたアングラーである。事実、すべての9ビルフィッシュを11カ月と1週間のうちにキャッチするという偉業を達成しており、IGFAに認定され、1989年のギネスブックにも名を残している。この記録は当ウェブで紹介したラス・ヘンズリーに破られるまで史上最短のものであった。また、37kg(80Lb)テストラインで810Lbのアトランティック・ブルーマーリンをキャッチしており、栄誉あるIGFA「10to1クラブ」入りを果たしている。共著に「Great Fishing Adventures」があり、「Marlin」「Fishing World」「Florida Sportsman」等に記事を連載している。


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