BIG BLUE
〜14〜
写真と文 須賀安紀
Written & Photographed by Aki Suga

世界有数の規模と、
完成度の高いビッグゲーム・トーナメント(JIBT)が、
なぜ斯くも国際的には無名なのか?

ステディー(現針路保持せよ)、ただし汽笛の吹鳴を忘れず!

 JIBTはHIBT(ハワイアン・インターナショナル・ビルフィッシュ・トーナメント)を模倣することで世界有数のトーナメントに育った(その認知度は別として…)。反面、HIBTは1998年度の第40回大会を境に大きな変貌を遂げた。中止となった翌1999年大会、そして第41回大会として再開された2000年大会からは、その規模とモチベーションにかつての高揚感は見られず、私自身はHIBTの立役者であったピーター・フィジアン氏の、極めて個人的な色彩の強い大会(尤もこのことがHIBTたる所以なのだが…)に変貌したと考えている。

エントリーチームの中でもひときわ洗練されたスタイルを誇る『ゴールデンベイ』のリリースシーン
 そのスケールがトーナメントのステイタスを示すものとは思わないが、参加チームが全盛時の1/4程度に激減した事は、HIBTをビルフィッシュ・トーナメントの頂点と考えていたアングラー達に大きな落胆を与えたことは事実であろう。ちなみに、華やかなりし大会系譜の最後を飾った優勝チームは、我らが日本の『マウナ・ケアSFC(牛村高明キャプテン)』であった。
 そして2005年7月。第27回JIBTは102チーム、500名を超すアングラーが参加し、下田の海で3日間の釣果を競った。大会2日目は午前7時半のスタートフィッシング直後、最悪の濃霧に見舞われたものの事故も無く、このことは大会本部艇の効果的な無線指示と、練度の高いビルフィッシャー達の冷静な対処の賜物であったことは疑いの余地が無い。同時にこの事は、図らずもトーナメントのステイタスの高さを証明することともなった。今回のJIBTに参加された方々は、このことを大いなる誇りにして戴きたいと思う。
 濃霧での海難事故は海外では1914年5月29日、セントローレンス川でカナダ船籍の客船『エンプレス・オブ・アイルランド号(1万4,191トン)』とノルウェー船籍の貨物船『ストールスタッド号(6,028トン)』が衝突し沈没。1,024人が死亡したという記録がある。我が国では1955年5月11日、瀬戸内海の宇高連絡船であった貨客船『紫雲丸』と貨物船『第3宇高丸』が衝突し、『紫雲丸』が沈没、168名の犠牲者を出している。

 現在はGPSやレーダーのお蔭で、濃霧の中のストレスは大幅に軽減され、目指すポイントもプロッターにマークしておけば辿り着くのは簡単かと思いきや、今回のような濃霧の中では心理的な影響のせいか、まっすぐ船を走らせることが意外と大変であった。太陽の位置も島影も、近くにいるはずの船影もまるで見えず、まして本船航路の近くで、もしもこの状態でGPSがダウンすれば間違いなくパニックに陥っていただろう。
 危険に満ち満ちた濃霧の洋上で、待機するチーム、霧の晴れ間を求めて南下するチーム、これまでの航跡を辿りながら帰港するチームを大会本部は無線で裁きながらトーナメントは一時ストップ。
 正午近く、『横浜ビルフィッシュクラブ』がフックアップ。そして「アーカイバル・ポップアップ・タグ」の装着にも成功し、タグ&リリースをしたものの、大会中断中のフックアップであることから当然ながらトーナメントの記録対象外の扱いとなった。しかし、ポップアップタグのデータ収集には大いに期待したいものである。
 霧が収まるのを待ち、出場艇全船の安全を確認しながら、正午にトーナメントは再開された。
その直後の12時8分に『ゴールデンベイ・トローリングクラブ』が推定40kgのマカジキをタグ&リリース。同時に「アーカイバル・ポップアップ・タグ」の装着にも成功した。
 今トーナメントは、3日間で33回のカジキのバイトがあり、8尾がキャッチされ、5尾がタグ&リリースされた。洋上でのファイトは、洗練の極みに近づきつつあるチームも見られ、ビッグゲーム・トロウリングというスポーツの領域が、この日本で確実に育ちつつあることを嬉しく思った。
 ただそれにしても、かつての、あの華やかなりし頃のHIBTの、表彰式のパーティー会場を後にする時の、あの後ろ髪を引かれるような、妙に切なくも胸に迫る満足感が感じられないのはなぜだろう? それは、ハワイの芳しい香のなせることなのか? それとも単なるエキゾチズムが妙なセンチメンタルを駆り立てるだけなのか?
 スケール、様々な見識、そしてリサーチ…、それらを個別に検証するに、JIBTは世界有数のトーナメントであることに間違いはないのだが、なぜかしら心に深く残る余韻が無いのである。その想いは私だけが感じていることなのだろうか? 
HIBTを模倣することから入ったJIBTではあるが、模倣するのを忘れたことがひとつだけあるとすれば、それは『ハワイアン・ホスピタリティー』であるのかもしれない…。

進水したばかりの『ラブフィッシュVI』は、その記念すべきファイトをアーカイバル・ポップアップ・タグの装着&リリースで見事に決めた。やはり、ベテランチームの余裕であろうか

(『パーフェクトボート』(ネコパブリッシング)掲載分より)


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