BIG BLUE
〜17〜
写真と文 須賀安紀
Written & Photographed by Aki Suga

“クオリティー オブ フィッシング”
その発想を育てるための、さまざまな自己規制

IGFAルールとトーナメント・レギュレーション

 『スポーツフィッシング』という、私たちの"お遊びとしての釣り"を愉しむ際に、より一層その愉しみの"クオリティー"を高めたいと願うのは当然のことである。セックスにおいても、その数を競っていた時代から、内容の充実に興味が向かうことは人生の必然でもある。尤もこれは体力と資金力に大きく左右されることであるが、そういうつまらぬ要素で事の本質を見失うこともまた虚しいことではある。巷では"クオリティー オブ ライフ"という言葉をよく耳にするようになったが、"クオリティー オブ セックス"ならぬ"クオリティー オブ フィッシング"についても、そろそろ真摯な議論がなされていい頃だと思う。

HIBTではトーナメント・ジャッジが配備されることもあった。
 各地の主要なビルフィッシュトーナメントは、目下の世界基準としての『IGFAルール』を採用していることが多い。そして、トーナメント主催者はパンフレットに「IGFAルール採用」と記すことで「私たちのトーナメントはスポーツマンシップにのっとったもので、釣果のみを競うそんじょそこいらの大会とは違いまっせ!」という暗黙のメッセージを送ろうとしている節もあるが、それだけでトーナメントの本質が決まるわけではない。とりあえず「IGFAルール採用」 と明記するだけでトーナメントの体裁が整うわけでは決して、ないのである。
 『IGFAルール』とは、アングラーが魚をフックアップし、取り込む(もしくはリリース)までの"共通作法"としての目下の"世界基準"であり、「同一ルールで、スポーツマンシップにのっとった公正な評価を可能とする釣りをしましょうよ!」というのが事の本質であり、それ以上のものでも以下のものでもないわけである。したがって当然ながらその中にはトーナメントにおける採点方法だとか順位の決定方法だとか、はたまたスタート&ストップフィッシングの時間や、海域などに関する記述があるわけではないし、触れる必要もないのである。トーナメントを演出するそういった要素はあくまで"トーナメント・レギュレーション"として大会運営者が決定することであり、そのレギュレーションが細部にわたって考慮されている完成度の高い大会ほど、参加者の満足度が高くなることは事実である。

 トーナメントにおいて『IGFAルール』を採用した場合、『IGFAルール』に違反することは当然ながらトーナメントにおける失格につながる。しかし『IGFAルール』を順守した釣りであっても、トーナメント・レギュレーションとして検量締切時刻などが設定されていた場合、それまでに帰着申請できなければ、それはIGFAルールとは関係無く、トーナメント・レギュレーションに違反したことで失格となる。しかし肝心のトーナメント・レギュレーションに関する告知の不徹底からくるトラブルというのが依然として、ある。この辺りに関しては、参加者の認識不足だけでなく、トーナメント主催者側の取り組みに問題がある場合が多い。レギュレーションに関する認識の徹底を図るのは、まずは主催者側の責任であり、参加者の認識不足を言う前に、その徹底に関する取り組みを問題にするべきである。どういう運営方法でトーナメントを盛り上げるかという視点に立てば、認識不足による無為な失望やトラブルを回避するための手立てをも考えるべきである。
 今年の下田沖でもあったことだが、フックアップ直後のドタバタを経てファイトを開始した矢先に、ファーストランで長く繰り出されたラインを他船にまたがれたケースがあった。結果?、ラインブレイクで悔しい思いをしたわけだが、ラインをまたがれたことが直接のラインブレイクにつながったのか、はたまた他の要因があったのかは分らない。しかし、ファイト開始直後のことで、ファイティング・フラッグを掲げていなかった場合には、双方に悩ましい自問自答が始まることになる。
トーナメント主催者は、さまざまな形でチームをサポートする。

 ファイティング・フラッグを掲げていようがいまいが、ファイティング中(と、思える)船には、適度な距離を保つようにという意識は参加者のレベルの問題であり、ファイト中にはファイティング・フラッグを掲げることを義務付け、洋上でのトラブルを未然に回避させようという意識はトーナメント主催者のレベルの問題である。洋上で予想されるさまざまなトラブルを回避するための知恵もまたトーナメント・レギュレーションには反映されるべきであり、そのレギュレーションを順守できなかった場合のペナルティーも
またポイントに加味されることがあってもいいと思う。
 IGFAルールをトーナメントに取り入れるということは、とりもなおさずIGFAの"スポーツマンシップの精神"を取り入れるということであり、この本質に立ち戻ればトラブルの多くは未然に防げるという見方もできるわけであるが、そこではまさにトーナメント主催者と参加者のレベルが問われているわけでもある。トーナメントにおけるIGFAルールは、あくまでもスポーツフィッシングという行為に関する基本的なガイドラインにすぎないのである。今こそトーナメント主催者は、どういうフィッシングスタイルの在りように意義を求めるかという真摯な議論を重ねながら、それを演出するためのさまざまなルール作りに取り組むべきである。
 繰り返すが、「IGFAルール採用」とうたうだけでトーナメントの体裁が整うわけでは決してないのである。

ファイティング・フラッグを掲げファイト中のアドミラルFC。JIBTにて

(『パーフェクトボート』(ネコパブリッシング)掲載分より)


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