BIG BLUE
〜19〜
写真と文 須賀安紀
Written & Photographed by Aki Suga

'06 TRY AGAIN!!

再び海に出る。黙して語らず…。
事務所を移せば福きたる!?

 あれがありこれがありの2005年は、既に過去のものとなった。
 錦糸町のタチアナはハバロフスクに帰り、年末に私は夜逃げをするかのように慌しく事務所を移転した。
 2丁目から3丁目への僅かな距離の移転だが、心機一転の移転先は湯島天神正面鳥居の右隣。男坂、女坂、湯島の白梅と情緒はあるものの事務所の広さは三分の一となり、これまで貯まりに溜まった資料を整理するのにまるまる十日を要してしまった。
 1978年当時からのHIBTの資料やら1960年代からの『Saltwater Sportman』など懐かしくもあるものの、他人が見ればゴミ同然の代物ばかりだが私にとってはお宝ばかりである。
 捨てるに忍びなく、されど捨てなければ手狭な事務所には収まらない。一度は捨てながらも何とも忍びなく、再び書棚に戻すなど、未練たらしくも葛藤、葛藤また葛藤の師走の十日間ではあった。昨年度の仕事は、面白いようにどれもがこけて、私はまたまた深い海に沈んでしまったのだが天神様の御利益か、不思議な上昇流に突き上げられて今、私の心は軽やかである。

 そろそろ日本でも本格的なビッグゲームの専門誌が必要だと思う。単に釣りのノウハウだけでなく、ビッグゲームの魅力に関わる文化、カジキの生態、巨魚にまつわる森羅万象を紹介するための活動を開始しようと思う。自身のスタンスで、全て自身の責任でマスターベーションに徹することができれば、それはそれで素晴らしいことではある。優柔不断な、信念の無い生き方は人生の浪費であるなどと、ついつい青臭い言葉を吐いてみるのも、自身のパッションを確認するためには必要なことかもしれない。
 数尾のカジキを釣っただけで、カジキ釣りのノウハウを声高に語る方もいれば、
百尾を越すカジキを釣りながらも"未だに分らないことばかりですよ…"とポツリと話す方もいる。さらにHIBTでの優勝や、オーストラリアでのブラック・グランダー、はたまたタヒチや彼の地でのチャレンジを重ねながらも謙虚な姿勢を崩さないビルフィッシャーもいる…。四半世紀前とは比較すべくも無いほど日本のビルフィッシャーのレベルは高くなっているのだが、何かが足らない…。スポーツマンシップ、ビルフィッシュを愛する人々の"クラブ"、ビルフィッシュを介したさまざまな人々との語らい、コミュニケーション…。
 『カタリナ・ツナ・クラブ』やノヴァ・スコシアでジャイアント・ブルーフィンを追った男達の"クラブ"。そこに集う人々の語らいや切磋琢磨が大きな刺激となるような"クラブ"。そんな大人のクラブが欲しいものだ。
 思えばケニアのコースト、モンバサにも『バハリ・クラブ』という素晴らしいフィッシングクラブがあった。休日にはさまざまなコンペティションが開催され、カップルで、ファミリーで、インド洋に面したマリーナを擁するクラブに集う。なんのコネクションも無いまま唐突に訪ねた私にも心地よいホスピタリティーを発揮してくれた彼らの笑顔が懐かしい。
 それもこれも、先の十日間で整理していた資料の中で見つけた笑顔である。そういう意味ではチョイとばかり手を伸ばせば全ての資料に手が届く新しいオフィスは随分と機能的でもあるわけである。
 ビッグゲームを愛する人々の笑顔が、少しばかりお高くとまったマリーナだけでなく、日本のかしこにある漁港でも見られるようになればと願う。
 漁港に、広い視野と海を熟知したハーバーマスター的な人々のネットワークができれば、日本の海辺のシーンは確実に変わるだろう。
 『ひき縄釣り=トロウリング』が、ようやく条件付きながら遊漁者にも認められるようになってきたのは時代の趨勢ではあるが、漁村の豊かな自然環境や景観などの地域資源を活用し、人々の交流が活性化すれば自ずとそこにはさまざまな"クラブ" が誕生するだろう。
 ビルフィッシングを通じて(1)イベント、(2)交流、(3)学習(さまざまな体験学習)、(4)海洋レクリエーション、(5)環境、釣魚保全といった活動が活性化すれば、それは素晴らしいことである。
 天神の傍で迎えた2006年。
 今年こそ、いい年であるようにと願いつつ…。

金もなく、船はボロ船。されど、その日のために準備は怠らず。

(『パーフェクトボート』(ネコパブリッシング)掲載分より)


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