4.カジキの資源保全と『TBF』

 ゲームフィッシャー達によってカジキ類の保全が必要である事が叫ばれるようになり、また漁業者による乱獲やゲームフィッシング海域の侵犯などが表面化した時に、ゲームフィッシャーが中心となって、米国にThe Billfish Foundation(以下TBFと略す)が創立された。米国やオーストラリアにおける漁業者に対するゲームフィッシャーの立場は、日本のそれとは全く逆であり、前者の社会的、政治的あるいは経済的な影響力は漁業者を上回っている。それは長い間、魚を主要な動物性蛋白源としてきた、日本、韓国、台湾などをはじめとするアジア各国との歴史的背景の違いであろう。
 このTBFは、いわゆる『鯨を救え』の運動に見られるような、少々ヒステリックとも言えるような活動ではなく、カジキの保全の問題を科学的に冷静に研究し実行して行くという点で長い歴史と実績がある。
 1)任務
 研究、教育、主張などによりカジキと、その生息環境の保全を図る。
 2)背景
 大西洋地域において、一年間におよそ50万匹のカジキ類が蠅縄漁で捕獲されており、全世界では何百万、何千万が
 毎年殺されている。

 3)哲学・全世界のカジキ漁場の過剰な開発やその資源破壊を防止する国際的な組織が必要
   である。そのためには、科学的なデータと知識に立脚した行動計画が重要である。
   また、世界的規模で、カジキの保全に効果的な情報を釣人と科学者が協力して助言する事が
   必要である。
 4)目的・全世界のカジキの資源についての科学的研究の直接的支援と援助。

  (1)世界規模で、教育を通じてのカジキの保全を援助する事。
  (2)TBFの任務に参加する会員の拡大。
  (3)カジキの保全に漁業者にも興味を持ってもらう様にする事。
  (4)カジキの釣り人、受益者、興味を持っている団体などのリスト化による会員の拡大。
  (5)カジキそのものを増やす事。
 5)主な研究・カジキの魚齢と成長の研究。
  (1)世界的規模での、港における漁獲高のデータの収集。
  (2)カジキの遺伝子分析と蛋白のサンプリング。
  (3)改良型タッグ(標識)打ちと再捕獲。
 6)教育関係
  (1)TBFのニュースレターの発行。
  (2)カジキを食べない、売らないのキャンペーン。
  (3)漁業者に対する放流認定書の授与。
  (4)タッグの打ち方のビデオの無料配付。
  (5)幼児を対象とした教育。
  (6)保全を考えた釣りの紹介。

5.ハワイの国際カジキ釣り大会と『PORF』


 1958年に始まった、世界のカジキ釣りのオリンピックともいうべきHIBT本大会(Hawaiian International Billfish Tournament)は、毎年7月又は8月に、選ばれた約80チームが参加して、ハワイ島のカイルアコナで開催される。一方、PORF(Pacific Ocean Research Foundation)は、HIBTと連携して、1975年にNational Marine Fisheries Serviceのホノルル研究所のジョン・マー氏の要請で設立された民間の研究団体である。その任務は、National Marine Fisheries ServiceやWestern Pacific Regional Fishery Management Councilと協力して、遠洋の魚類の保全、研究、管理を任務として活動している。PORFは、HIBTの開催期間中に大会参加者の協力によるオークションを開催して、その運営資金の一部にするなど、カジキ釣りを楽しむ人々との密接な関係を保っていると共に、大会で釣られたカジキの冷凍されていないサンプルの提供を受けている。
 1)業績
  (1)国際ビルフィッシュシンポジウムの開催。
  (2)述べ、約60人の科学者の研究の助成。
 2)主な研究・カジキの魚齢の推定法。
  (1)クロカジキの成長過程の研究。
  (2)カジキの脳と目を暖める器官の研究。
  (3)超音波によるカジキの回遊深度の追跡。
  (4)遺伝子分析によるカジキの交配の研究。
  (5)タッグアンドリリースの実施と再捕獲。

以上のごとく、この団体は主として西太平洋地域におけるカジキの研究の中核の一つとして年々その研究成果を上げ、実際のゲームフィッシングにも直接効果を与えている。特に、約15年間に亘るハワイ島の西部海域のカジキの捕獲分布状況の詳細なデータは、ゲームフィッシャーマンにとっては、貴重な釣り場所選定の判断資料であるとともに、今後のカジキの保全の在り方についても大きな力となろう。また、バーバラ・ブロックおよびジョン・グレーブス両博士による遺伝子の分析(Molecular Genetics)により、大西洋と太平洋のカジキの一部が交配していることを突き止めた業績は大いに賞賛さるべきであろう。また、将来PORFは、人工衛星の追跡システムを使って、カジキの平面的な回遊ルートの追跡と同時に、遊泳深度の追跡による生態の研究を行うべく準備中である。
 このPORFとカジキのゲームフィッシャーマンとの協力関係は、今後の世界の釣人と研究者との協力関係の一つの方向性を示すものとして注目したい。

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 日本におけるIGFAの始まり
 日本におけるカジキ釣りの現状
 世界におけるカジキのゲームフィッシングの動向
 ケアンズのビルフィッシング開拓史
 ブルーフィン・ツナから始まるビッグゲームの勉強時代
 ソルトウォーター・ゲーム・フィッシングの軌跡
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