| ボートの全長を正しく決める まず、ジムと私はいろいろな全長のデザイン・スケッチをやりとりし、議論に時間を費やしたのち、“究極SF”の理想的な全長を34ft(10.2m)に決定した。このサイズなら荒天でも充分な耐航性を持たせられるし、快適なキャビンと広いヘルムステーション、さらに本当に大きなコクピットも提供できるのだ。エンジンについては、ジムはキャタピラーの新しい3116TAが気に入っていた。当時、発表されたばかりのこの新しいキャタピラーは、かの定評あるCAT3208TAとほぼ同馬力であるにもかかわらず、サイズは高さが1/2ft(15cm)近く低く、幅も1/2ft以上縮んでいて実にコンパクトだ。その上、3116の重量は3208より約400ポンド(約182kg)も軽いのだ。もちろんほかのエンジンを載せてもかまわないのだが、ボートの長さ、エンジン、艇の使い方が明確だったので、デザインは一気に固まった。「オフ・サウンディングス(OS)34」が、それである。 全幅は耐航性、スピードに影響する 全長の決定についで重要なのは、艇の全幅が広すぎないようにすることである。なぜなら、本物のSFは全天候型のボートでなければならないからだ。 ビーム(全幅)とルーム(艇内空間)を同義語だと思っているボートマンも多いが、実際は違うのである。ルームはボリュームであり、ボートのボリュームは即ち排水量である。たとえば、ここに同一排水量のボートが2隻あるとしよう。一隻は幅広で全長が短く、逆に他方は長くて細身である。この2隻では利用可能なルームも建造コストもほぼ同じになるだろう。しかし、2隻のエンジンが同一馬力だとすると、実は細身の艇の方が幅広艇より速く、しかも荒天下においてより楽にハンドリングでき、乗り心地も優るのである※2。もちろん、SFを本当に細長く造るわけにはいかないが、幅が広すぎればたたきやすくなるし、ローリングも鋭くきついものになりがちである。さらに、ボートの全長に比べてワイドなトランサムは、追い波や斜め後方から波を受けたとき、ブローチング傾向を増大させる。なぜなら、波が後ろ、あるいは下からトランサムに当るので、スターンの幅に比例した浮力をトランサムに与えるからだ。波に追い越されるたびにトランサムが持ち上げられ、横方向へ回転させられるわけだ。OS34のように全幅を中庸に保てば、この傾向をだいぶやわらげることができるのだ。 ※2:細身の艇の効率の良さ、ハイパフォーマンスについては、同じ筆者による別項ウェブ記事でより詳しく解説されている(訳者注) |
| 快適な走行性を狙ったハル・デザイン 無理のない全幅の採用に加え、オフ・サウンディングス34の船型には良いボートにとって非常に大切な要素・特徴がいくつか折り込まれている。 まず、前部デッドライズが非常に鋭いから(バウで60度)、たたく傾向は十分におさえられている。加えて前部チャインは高く持ち上げられ、これがまた、たたく傾向を押さえるのに寄与している。荒れた海面での低速操船性を高めるため(高速でも同じだが)、前部セクションには若干のコンベックス(凸型のふくらみ)を与え、十分な浮力を確保している。 フォアフットも深めになっているが、これが鋭いバウエントリーとあいまって、高速での波当りをやわらかいものにする。その結果、荒天下でもOS34は風上航のスピードを十分に維持できるはずだ。しかし、この深いフォアフットは、反面で、風下航(追波)での操縦をむつかしいものにしてしまう。そこで私としてはバウとスターンの形状、浮力を決定するに当っては慎重な吟味検討を加え、ベストなものにまとめあげたつもりだ――この作業はサイエンスというよりもアートに近い領域での仕事であった。 また、OS34はバウに大きめのフレアを持っているが、これは艇をドライに保つのに非常に有効なデザインである。このデザインはまた、バウ上部に十分な浮力を与えるから、ステムをより鋭く造ることが可能となり、荒天下に低速で走ったとき、バウが沈み込むこともなくなるのである。 チャイン/スプレイ・ノッカーは波を下方へ効率的に返してやる形状を採用した。そのためボートは非常にドライで、同時に、プレーニング時のリフト効果や航行安定性も高まることになった。このチャインは艇後部へ行くにしたがって幅が広がっているので、リフト効果はさらに高くなっているが、この部分がたたく傾向を強める心配はない。さらに好都合なことに、幅のある後部チャインは水線下へと伸びており、小刻みな鋭い横ゆれを防止するのに役立ち、ボートを非常に安定した“釣りプラットホーム”にしている。 |
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艇の後部セクションは中央部よりほんの少しだけVが浅くなっている(デッドライズはミジップで21度、トランサムで20度)。しかし艇後部の幅はせばめてあり、ボリュームも少なくしてあるから、深めのVのままでもデッドライズを減らしたのと同じ効果があり、トローリング時やドリフトしたときの艇の安定性を高めている。 もちろん、OS34のラインズに盛り込んだ要素はほかにも数多くある。ハルとチャインの長さ方向のバトックアングルは最適なプレーニング・トリム角度(前後方向に約4〜5度)が得られるように調整してあり、前方視界がさまたげられることはない。 |
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フライブリッジは必要か |
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読者もひと目でおわかりと思うが、OS34のコクピットは市販プロダクションモデルのどれよりも広いし、一方、コーミング間の幅では平均値を大きく下回っている。当然のことながらOS34にはトランサム・ドアもついており、その幅は32インチ(約80cm)で、巨魚でも楽に取り込めるフルサイズとなっている。 |
| デッキとコクピットの配置は? オフ・サウンディングス34の左舷側、コクピット前端には引き出しと物入れ付きのタックル・カウンターが置かれている。どのボートでも釣り用ギアはすぐに数の増えるものだが、ここならそれも全部入ってしまう。カウンターの上はシンクで、下にはデッキ・ウォッシュダウン用のホースがリール巻きでしまいこまれている。右舷側のコクピット前端はイケスになっている。ヒンジ付きの折りたたみ式ベイトプレップ・カウンターがついており、持ち上げれば広い作業台になる。コクピット・ガンネルの下は両舷とも釣行時につかうロッド・ストレージになっている。長期保管用ロッドラックはキャビンの中に設けられていて塩や湿気とは無縁だ。ダイネットとVバースの天井に、竿をしっかりと固定できるラックが取り付けてある。 ブリッジデッキのステアリング・ステーションは、右舷に横幅のあるヘルムシートを置き、左舷にはクッション付き5ft(約1.5m)長のクーラーが座席の役割を果している。ブリッジデッキの床は大きく開くのでエンジン保守は容易である。コクピット内からブリッジへ上るときは横幅3ft(0.9m)のステップを踏んで行くが、このステップはタックルボックスのふたを兼用している。このコクピット/ブリッジデッキ形状の特徴は、たとえトランサムドアがいっぱいに開いていて大波が打込んだとしても、水はコクピットに閉じ込められキャビンは浸水をまぬがれるというところにあり、安全面からいって大変効果的である。 ヘルムステーションそのものは、このサイズ、タイプの艇では標準的なものだ。しかし、本格指向のSFが必要とする電子機器類はすべて収納できるように、目の高さ位置に幅6ft(1.8m)のラジオボックスをハードトップ下に取り付けてある。 ウインドシールドはスモークのレクサンを使ったワンピースで、上部にはモールディングを付けるか頑丈なパイプを取り回すように考えている。それをつかめば荒れた海でもしっかり自分の体をホールドできるばかりでなく、周囲にストーム・エンクロージャーを取り付ける場合はその取り付け場所として利用できる。 |