BILLFISH ON FLY(2)

TERMINAL FLY TACKLE FOR BILLFISH

Backing, Running Line, Fly Lines, Knots
ビルフィッシュのためのライン&リーダーシステム


文/ジャック・サムソン
訳・構成/編集部

日本のソルトウォーター・フライ・ロッダーに強烈な刺激を与えてくれるジャック・サムソンの「ビルフィッシュ・オン・フライ」だが、今回もまたシリアスなオフショア・フライロッダーにとっては、見事にツボを押さえた堪まらない内容である。今回はバッキングからリーダーシステムまでのソルトウォーター・フライフィッシングの一番込み入った部分を詳細している。ビギナーにとって、特にリーダーシステムは長さの「ルール」などのために複雑というイメージがあるようだが、この「ルール」はあくまでも記録を狙う場合の話。ただ楽しみとして釣るだけなら、「ルール」なんて無視したって構わないのだ。

バッキングラインはセイルフィッシュ用とマーリン用で分ける

 ビッグゲーム・フライフィッシングで使用されるタックルのうち最も重要なのはロッドとリールに違いないが、ロストフィッシュの原因として一番多いのはティペット切れやノット抜けをおいて他にない。
 ティペットはターミナル・タックル(ロッド&リール以外の全て、具体的にはバッキング、ランニングライン、フライライン、リーダー、ノット、フライを指す)の中では最も弱い部分なので、そこがブレークするのは決して不思議なことではないが、ほんのちょっとティペット・マテリアルに気を使い、バッキングやランニングライン、フライラインを慎重に選択するだけで、バラシの確率はかなり減るものだ。もちろん、ノットやメタルスリーブによるターミナル・タックルの接続が確実に行なわれていることが条件だが。

 バッキングにはこれまでブレイデッド・ダクロンやミクロンが使用されてきた。フライによるビルフィッシングが始められた頃は、よりたくさん巻いておきたいという理由からたいてい20Lbのバッキングが用いられた。IGFAの最大のティペットクラスが16Lbのうちはそれでもよかったが、1991年の4月に20Lbティペットクラスが新たに加えられてからは、30Lbかあるいはそれ以上の強さのバッキングが求められたのである。ティペットと同じ強さしかないバッキングを好んで使うアングラーはどこにもいないのだ。

長く太いフライラインは水中での抵抗を増す。フライラインは短ければ短いほど、細ければ細いほどよいのだ。

 ブレイデッド・バッキングの最大の弱点は、僅かな傷が編みこみを解けさせブレークの原因になり得ることだ。現在、私はセイルフィッシュ用に30Lbのミクロン(視認性のよい蛍光イエローのもの)を用い、マーリン用には36Lbのコートランド製Greenspot(編集部注:ブレイデッド・ダクロンのバッキングライン)を使用している。この僅か6Lbの差は、巨大なマーリンを深みから引き上げようとする時、私の心に大いなる安堵をもたらしてくれるのだ。それでいて、30Lbとほとんど変わりない量を巻けるのは素晴らしいことだ。
 かつて、私はキャム・シグラー(編集部注:アウトドアウェア「キャム・シグラー・ストア」のキャム・シグラー)と一緒にバハ・カリフォルニア半島イーストケープにあるフィッシングロッジ「スパ・ブエナ・ビスタ」を訪れた。その釣行で私は7/0のダブルフックに巻いたドラド(シイラ)パターンを使って100Lb余りのストライプト・マーリンをキャッチした。この魚はサイズの割りにはタフで、フィッシャーの18番ヘビーモデル・ブルーウォーター・フライロッドを使用していたにもかかわらず、ファイトタイムは45分にも及んだ。私は先述の36Lbバッキングを使っていたことに感謝した。

モノフィラメントのランニングラインが絶対に必要な2つの理由

 バッキングで問題なのは、伸びがないという点である。ティペットやランニングラインといったモノフィラメントの部分はかなり伸びるが、バッキングはそうはいかない。結果、強い力で引っ張られているバッキングラインに他の魚が当たったりしただけで、ティペットは簡単にブレークしてしまうのである。これを防ぎ、ショックを吸収させるために、バッキングとフライラインの間には、100ftほどのモノフィラメントのランニングラインを設けるのが普通である。このランニングラインには、もうひとつ役割がある。フライラインをバッキングに直結していると、ストライク直後はバッキングをつかむことになるが、これはあまりにも細過ぎ、下手をすれば指を切ってしまいかねない。その点、モノフィラのランニングラインであれば、しっかりつかむことができるというわけである。
 このランニングライン向きの40〜45Lbの強いモノフィラメントは数多く売られている。私自身は、数社のラインを試した結果、しなやかでよく伸びるSchneiderの45Lbに落ち着いている。


フライラインは25〜30ftのファストシンキング・シューティングヘッド

 現在、フライラインのマーケットシェアはコートランドとサイエンティフィック・アングラーに大きく2分されている。20Lbティペットが導入されてからというもの、フライラインは人々が考えているほど強いものではないという事実が明らかになった。テストした結果、18〜20Lbほどの破断強度しかないものも多く、30Lbの強度を持つものはごく一部であった。技術者にはラインの芯の強度を増すという新たな課題が与えられたのだ。
 ビルフィッシュ・フライロッダーたちの間でここ数年の流行になっているのは、25〜30ftというごく短いファストシンキング・シューティングヘッドである。これらは500〜600グレインのヘビーなタイプで、径が小さいのが特徴である。以前は90ftもあるようなフローティングラインを使っていたものだが、時速60マイルものスピードでビルフィッシュが連続ジャンプすると、フライラインには相当なドラグが掛かり、ティペットはアッという間に切れてしまう。そこで、フローティングラインを詰めて使ってみたりしたのだが、結局はシンキング・シューティングヘッドに落ち着いた。ダブルフックの重いビルフィッシュフライでも楽にキャストでき、水中での抵抗も少ない。

 以前、私はコートランド社の前社長レオン・チャンドラーとシューティングヘッドの開発に取り組んでいた。コートランドのファストシンキング・シューティングヘッドST-15Sでは多くのビルフィッシュをキャッチしていたが、モノフィラとの接続やメタルスリーブの使用によって、ラインの外側のコーティング部が剥げてしまうことが分かった。その状態のラインをテストしてみると、約30Lbの強度しかなく、それ以下の張力でもブレークしてしまう場合さえあった。

セイルフィッシュを狙う場合のバッキングラインは30LbでOK。筆者はコートランドの30Lbミクロンを使用している。

 コートランドを引退する前、レオンは設計技術者であるマーリン・ローズに対してより強い芯を持つシューティングヘッドの開発を依頼した。そして生まれたのが、40〜45Lbという驚異的な破断強度を持つ30ftのヘビーデューティーなシューティングヘッドである。前述したバハのイーストケープ沖でストライプト・マーリンを釣った時も、私はこのラインを使っていた。これは当時市販されていたビルフィッシュ用フライラインの中では、ズバ抜けた性能を持っていた。


右上:Mason。左上:MAXIMA。下:ANDE。モノフィラメントそれぞれのクセを生かし、適材適所で選択。
クラスティペットとショックティペット

 ティペットとして使えるモノフィラメントは実に多い。バークレーのTrimaxやTrileneをはじめ、デュポンのMagnumやMagnaThin。Silver Thread、フェンウィックのFlexline、アブ・ガルシアのUltra Cast、マキシマのTournament Monoは表面が非常に硬く、傷や摩擦に強い。私はこの10年の間Masonをクラスティペット用に使い続けている。16Lbが非常によかったので、20Lbはどうかと思ったが、やはり期待通りであった。
 IGFAルールにある12inのショックティペットには、普通100Lbのモノフィラが用いられる。ショックティペットに関しては、どのメーカーのものであってもそんなに違いはないだろう。柔らかいのが好きか、硬いのが好きかというだけのことだ。私は何年もアンディの100Lbモノを使っているが、あえて変える理由は見当たらない。
 それよりも強調したいのは、12inのショックティペットというのは、あくまでも記録を狙う場合にだけ必要なルールだということである。私自身はレコードブレーカーではないので、キャッチした魚のほとんどはリリースしている。そこで、ビルによるティペット切れを防ぐために、ショックリーダーには100Lbのモノフィラを3ft以上もとっている。

スリーブを使用したループtoループとスパイダーヒッチによる
簡単なダブルライン

 ビルフィッシュのフライフィッシングは新しいジャンルのスポーツである。ノットに関しては人それぞれなので、ノットは何がベストかといった長演説は止めておくとしよう。
 バークレーのスリーブはとても強力で、私は今ではノットの大部分をスリーブによるループtoループにしてしまっている。まずバッキングとランニングライン(45Lbモノフィラメント)の接続。ランニングラインには#4のスリーブを使ってループを作り、ループtoループでつなぐ。ランニングとフライラインの接続にも、ランニング側に#4スリーブを使う。フライラインは両端に#5のスリーブを使ってループを作る。私はバットリーダーを設けていないので、クラスティペットもループtoループでフライラインに結ぶことになる。さらに私はフライとの接続にもスリーブを使っている。100Lbのショックティペットに#5スリーブでループを作り、フリースイングでフライを結ぶわけだ。

スリーブ使用によるループtoループは、ライン&リーダーシステムの各所に使用できる。


スリーブのサイズはライン径に合わせて選び、きちんとクリンパー(プレッサー)で潰す。
 ショックティペットとクラスティペットとの接続にはオルブライト・ノットを用いている。クラスティペットにスパイダーヒッチでダブルラインを作り、オルブライトで結ぶ。ダブルラインを作る場合、私は複雑なビミニツイストよりも簡単なスパイダーヒッチを用いている。ビミニツイストが特別に強いといのは迷信である。スパイダーヒッチはもともとキューバで考えられたノットで、ほんの数秒でできるのが特長だ。

 以前、ノットのエキスパートであるダン・ビフォード(ソルトウォーター・フライフィッシャーマンとしても有名)と私は、両方のノットの強さを機械でテストしてみた。その結果、ビミニツイスト、スパイダーヒッチともに22Lbでブレークしたのである。テストに使用したラインは、私がクラスティペット用に使っているMasonの20Lbである。つまり、2つのノットはともに、20Lbというラインの破断強度よりも2Lb強かったわけである。
 さて、次回はターミナルタックルのまさに末端、フライパターンについて話をしよう。

バッキングとフライラインとの間にモノフィラメントのランニングラインを設け、ショックを吸収させる。これはビルフィッシュに限らず、オフショアのフライでは常識だ。

筆者紹介/
ジャック・サムソン
(JACK SAMSON)
「フィールド&ストリーム」誌の前編集長。現在は「マーリン」誌のフライフィッシング部門、及び「フライロッド&リール」誌のソルトウォーター部門の編集を担当。ソルトウォーター・フライフィッシングの洗礼を受けたのは60年代半ば。ボーンフィッシュ、パーミット、ターポンといったフラットの釣りから始まり、やがてドルフィンフィッシュ、ツナ、アルバコア、ワフーといったオフショアゲームまでカバーするようになる。ビルフィッシュに取り憑かれたのは、1972年のトーナメントがきっかけ。フロリダキーズ沖でアトランティック・セイルフィッシュをキャッチした後、83年にはジャマイカ沖で43Lbのアトランティック・ブルーマーリンを上げる。アトランティック・ブルーをフライでキャッチしたのは世界で2人目。85年にはコスタリカにて105Lbのパシフィック・セイルフィッシュをキャッチ。続いてメキシコのマサトランにて131Lbのストライプト・マーリンを射止める。89年の第1回インターナショナル・フライフィッシング・トーナメントでチーム優勝。91年にはオーストラリアにて50Lbのブラックマーリンをキャッチ。同年10月にはベネズエラで60Lbのホワイトマーリンをキャッチ。両洋のセイルフィッシュと4種類のマーリンをフライでキャッチしたのは、ビリー・ペイトに次いで2人目。そして92年の8月、念願のパシフィック・ブルーマーリンをキャッチし、史上初の7ビルフィッシャーとなった。フィッシング&ハンティングに関する著書は計15冊にも及び、中でも「ソルトウォーター・フライフィッシング」は名著の評価が高い。


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