The Southern California Style
SURF FLYFISHING

サーフフライフィッシング・マニュアル
西海岸のエキスパート、ニック・クルシオーネが教える

サーフフライフィッシングの実際

By Nick Curcione
訳・構成/スポーツアングラーズ編集部


海のフライフィッシングといえば、シャローフラットでのターポンやボーンフィッシュ、オフショアのビルフィッシングなどがすぐに思い浮かぶが、残念ながら日本のフィールドでは難しいものがある。ターポンやボーンフィッシュは日本にはいないし(正確に言えば、沖縄方面では時折キャッチされている)、ビルフィッシュに関してはいかんせんチャーターボートが整っていない(しかし魚影は濃い!)。日本のフィールドで最もポピュラーなターゲットと言えば、やはりシイラやキハダということになるのだろう。でも、少しばかり視野を広くしてみると、フライでもイケそうなフィールドやターゲットは結構あるということに気づく。サーフというフィールドもそのひとつだ。事実、アメリカでは、このサーフフライフィッシングというのがなかなか流行っていて、それなりのタクティクスがすでに確立している。それに比べて、日本のサーフはまったくのノーマーク。やり方しだいでは、ヒラメやシーバスだってターゲットになりえるかもしれないわけで、挑戦してみる価値は充分にあるだろう。そこで今回は、アメリカ西海岸におけるこの分野の先駆者、ニック・クルシオーネ氏にサーフフライフィッシングの実際を伝授してもらった。

サーフへの招待
〜Anywhere the ocean rushes up on a beach〜
打ち寄せる波! 飛び散る飛沫!
ベイトアングラーとサーファーを尻目に逆境を楽しむ自虐的快楽

 その日のコンディションを「良好」と表現するには、かなりの無理があった。打ち寄せる波の中へウェーディングする間にも、頭上ではロサンジェルス国際空港に離着陸する旅客機が轟音を響かせながら滑空し、さながら巨大ジャクジーにでも飛び込んだかのようだ。勢いよく顔に飛び散る潮の飛沫は、まるでジェットか何かで吹きつけられているかのごとくで、足の下の砂地は圧倒的な波の力によって確実に流されていく。足元をすくわれないようにするためには、相当の体力と絶えまぬ努力が必要となる。



サーフでのファイトは、フラットやオフショアとはまた違った独特の解放感を味わわせてくれる。ビーチをサーファーに独占させておいてはモッタイナイ。
 だが、波を防ぐものが何もないサーフにウェーディングする場合、こういった情け容赦ないコンディションは必ずついて回る。遠投の可能なベイトフィッシングであれば、状況に合わせていろいろ工夫を凝らし、さして辛い思いをせずとも立派に釣りは成り立つが、ことフライフィッシングに限っては、サーフというロケーションは我々をまったく場違いなエイリアンにしてしまう。スピニングタックルを使うベイトフィッシング派の釣友たちは、口にこそ出さないものの、憐れみに満ちた表情を湛えて、フライタックルを私が今にも放り出すのではないかと半ば確信しているかのようだ。
 この種の冷たい視線は、ソルトウォーターフライフィッシャーマンの人口が他の地方に比べて急激に増えつつある南カリフォルニアにおいても、そう珍しいことではない。たしかに、「なにもフライで狙わなくても…」という大方の意見には、私自身、身に覚えがある。フライロッドを初めてサーフに持ち込んだ時などは、事実そう思ったものだ。だが、たいていの物事がそうであるように、この釣りに関しても、経験を積めば積むほど、熟達と自信は確実に得られる。

 しかし、サーフでフライを振るという行為にどうしても納得がいかないという釣友に対しては、何を言ったところでムダだ。別にボーンフィッシングに備えて安上がりな練習をしているわけでも、あるいは選りすぐりの愚かさに磨きをかけているわけでもないことを説明してみようとも考えてみたが、行動の前に言葉がいかに無力であるかを思い出し、あえて騒がず、ただ自分の釣りに専念することにした。
 たしかに、2月のその朝は例外的に厳しいコンディションだった。風はショアに向けてまともに吹きつけ、9ftのロッドのティップセクションは、まるでキャスティング中のように後方へしなった。

 自然というのは、時に無慈悲なものだ。このビーチで満ち潮を迎えるためには、午前3時半に起きねばならなかったのだが、私は見事に寝坊してしまい、1時間半、猛スピードで車を飛ばすはめになった。ところが、焦って到着してみると、コンディションは最悪。まさに絵に描いたような悲惨さであった。

バードパーチ(和名:シマウミタナゴ、barred perch, 学名:amphistichus argenteus)は、別名サーフパーチとも呼ばれる。最大で3Lb。

 しかし、焦りは禁物だ。ウェーディングしてキャストを始める前にやっておかなければならないことがいくつもあるのだ。世界中どのサーフを釣る場合でも、サーフフライフィッシングを極めるためには、その土地土地の対象魚や潮の特徴、サーフの読み方、適切なタックルやフライパターン、必要不可欠なギア類といったベーシックを学んでおかねばならない。
 そこで、この挑戦しがいのあるスポーツ、サーフフライフィッシングを始めてみようという我らがウェブマガジン『スポーツアングラーズ』の読者のために、これらのベーシックについて南カリフォルニアを例に講義してみよう。対象魚や場所などが変わっても、根本的な部分は変わらない。ベーシックさえ理解していれば、ビーチに波が押し寄せる場所ならどこでも、うろたえることはないだろう。

バードパーチとコルビナ
〜Surf species in Southern California〜
親しみやすい体型のバードパーチと波打ち際での
サイトフィッシングに極まるサーフの幻影コルビナ


 バハカリフォルニア半島から北進する亜熱帯海流は、多くの栄養物を南カリフォルニア沿岸の海域にもたらし、実にバラエティーに富んだ魚たちを引きつける。その中で、サーフ・フライフィッシャーマンにとって最もポピュラーなのは、バードパーチ(和名:シマウミタナゴ、barred perch, 学名:amphistichus argenteus)とコルビナ(corbina, 学名:menticirrhus undulatus)の2種類である。
 このうち、別名サーフパーチとも呼ばれるバードパーチは、フライをよく追うことで知られている。分布域としても、コンセプション岬の北からバハのサン・クィンティンあたりまでと広く、魚影も非常に濃い。バードパーチはソルトウォーターのゲームフィッシュとしてはかなり小型で、3/4〜1&1/2Lbの魚がほとんど。最大で3Lbほどに成長するものの、このサイズは極めて珍しい。

これがコルビナ(corbina, 学名:menticirrhus undulatus)。どこかイシモチに似たコルビナはセレクティブな魚。かなりのテクが要求される。

 バードパーチの特徴は、その名の通り、体側にある数本の縦縞で、体型としては淡水のクラッピーによく似ている。最盛期は1〜3月までだが、年によっては4月まで釣れ続くこともある。産卵準備のため、雌魚が深場からサーフに上がってくる1月は、大型を狙えるチャンスである。バードパーチがサーフで捕食するのはサンドクラブと呼ばれる小さな甲殻類(フライパターンの項の写真参照)である。


コルビナは夏から初秋にかけてがシーズン。バードパーチと同じく、サンドクラブを主食にしている。平均で2Lb、最大で4Lbと、それなりのサイズ。
 バードパーチが冬から春の釣りなのに対して、コルビナは夏から初秋が最盛期である。波打ち際に大量のサンドクラブが集まる7〜8月にかけてがベストシーズンだ。コルビナの特徴はその素早さで、ボーンフィッシュがシャローフラットの「ゴースト」であるならば、コルビナはサーフの「ファントム」と言えるだろう。実際、形態も非常によく似ていて、カニなどの底生動物を捕食する傾向もまったく同じだ。コルビナはボーンフィッシュほど極端に臆病ではないものの、フライのようなアーティフィシャルで欺くのはボーン以上に難しい。私の経験から言って、この点においては、あの超セレクティブなパーミットを凌いでいるといっても過言ではない。幸運にも、警戒心を解いて捕食活動に耽っているコルビナを発見したとしても、フライはあっさりと拒否されてしまうのである。

 バードパーチを狙う時のように、泡立つ波の中へブラインドキャストを繰り返してもコルビナをキャッチすることはできる。だが、この釣りの醍醐味は、やはり、わずか数インチの波打ち際で捕食活動中の個体を狙い撃ちするサイトフィッシングに極まるだろう。ベストは真夏の早朝、引き潮時で、特に無風時が望ましい。風のない日は水がかき回されないので、ボーンフィッシングの時と同じく魚を見つけやすいのだ。

〜Tidal Action〜
サーフフィッシングのカギは潮。
満潮の1時間前と1時間後に全てをぶつける。


 毎日のスケジュールがびっしり詰まっている多忙な状況では、古い格言に従って、暇のできた時こそが釣り日和となるわけだが、少なくともサーフフィッシングの場合はそいうわけにはいかない。なぜなら、サーフの釣りを成功へと導くのは、我々の都合とはまったく無関係な潮の動きであるからだ。当然ながら、釣行の計画はこの潮の動きを考慮した上で決定しなければならない。

この親しみやすい体型をした小型魚は、冬から春にかけてがシーズン。サンドクラブという甲殻類を主食にしており、波打ち際で狙える。


背ビレが見えるような波打ち際で、しかもサイトフィッシングで狙うというのが、コルビナの正統的な釣り方。その素早さはボーンフィッシュに例えられるほど。
 潮流の重要性は、どのような時に魚たちがエサを捕らえているのかを考えれば、容易に想像できるはずだ。満ち潮時や大潮時はボトムがかき回されて、甲殻類やイソメ類などのエサが水中に舞い上がる。同じ状況は岩場においても当てはまる。潮の満ち引きによって増幅された波動は、岩に付いているカニなどの甲殻類やその他の様々な生物たちを、魚たちが待ち受ける海中へと解き放つのだ。
 これらの生物を捕食する魚たちは、こうした潮の動きを利用する術を知っている。1日のうちで最も釣れ盛る時間帯が、最も潮がよく動き時間帯と重なっているのは、このような理由からである。特に期待できるのは、潮が最もよく動く、満潮の1時間前と1時間後である。逆に、満潮と干潮の潮止まりは、水の動きが最も小さいために、エサとなる生物が砂の中などに隠れてしまい、魚たちの捕食活動は自然と不活発になる。つまり、潮止まりは1日のうちでも最も期待できない時間帯なのである。

サーフを読む〜Reading the Surf〜
サーフに永遠のホットスポットは存在しない。
まずは波を観察すること。そして、何よりも歩くこと。


 淡水のトラウトフィッシングでは、流れを読むことの大切さが盛んに説かれるが、サーフでの釣りを成功させるためにも、やはり「サーフを読む」ことが不可欠になる。サーフフィッシングを始めたばかりのビギナーにとって、延々と伸びるビーチはどこも同じように見えるだろうが、経験を積んだサーフアングラーにとっては、波を熟知したサーファーと同じく、決して同じには見えない。
 魚たちの行動は、その生息環境と非常に密接な関係がある。したがって、その環境の特徴を学ぶことは、そのまま、そこに暮らす魚たちの行動を学ぶことでもあるのだ。例えば、波打ち際からほんの数ヤード先に魚がスクーリングしていて、フライがキャストされるのを口を開けて待ち受けているような場所さえあるのだ。事実、魚の存在を示すサインはあちこちに見つけることができる。要は、そうしたサインにアングラーが気づき、それを理解することができるかどうかである。
 基本的に、サーフを読むということは、彼の特徴を注意深く観察するということだ。波の形や動きを観察すれば、ボトムの形状をかなり正確に知ることが可能なのだ。
 サーフを読む上で最も重要なカギになるのは、波はシャローエリアでブレイクするという事実だ。これは、ビーチから海に向かってタテ方向に見た時と、ビーチと平行にヨコ方向に見た時の両方に当てはまる原則である。例えば、ヨコ方向から見た場合のイラストAを見てほしい。イラストに描かれているように、サーフのボトムはディープポケットとシャローが波形に連続しているのが普通だが、彼がブレイクする地点は必ずシャローエリアの上と決まっていて、ブレイクした波はその後ディープポケットの上でロールするのである。

<サーフ>の読み方


サーフを読むこととは、波を読むこと。「波はシャローでブレイクする」という基本を頭に叩きこみ、波の形や動きを注意深く観察しよう。イラストAはビーチを平行に見た断面図。波のブレイクポイントは必ずボトムが盛り上がったシャローエリアの上にある。シャローエリアを通過しブレイクした波は、そのままロールすることになる。

 また、イラストBのようにタテ方向から見た場合でも、ボトムに落ち込みや窪みなどのディープポケットがある場所では、波はブレイクすることなく比較的フラットに押し寄せるものなのだ。例えば、イラストBのように中央部がフラットで、両側がブレイクしているような波であれば、フラットになっている部分のボトムに何か落ち込みのようなディープポケットがあるというサインなのである。つまり、ショアに向かって押し寄せる波の形は、その下にあるボトム形状を伝えているわけである。

イラストBは、ビーチから海に向かって見たもの。ボトムにチャネルのような溝があると、その上に波は立たず、フラットなままになる。


 このようなディープポケットは、エサが集まりやすいため、それを捕食する魚も当然集まりやすい。カニやイソメ類、小型のベイトフィッシュといった小生物たちは強い潮流に逆らって泳ぐことができないため、必然的にディープポケットなどの水の流れが緩い場所に流されてくるのである。バードパーチやコルビナをはじめとする捕食魚は、このことをよく知っていて、こういった特定の場所と時間帯を狙って捕食活動を行なっているのだ。サーフを読む上でもうひとつ覚えておきたいのは、波の動きからビーチのスロープ角度が分かるという点である。一般的に言って、ショアに近づくにつれ、波はブレイクし始めるものだが、実はこのブレイク地点からショアラインまでの距離によって、スロープ角度が急なのか緩やかなのか(つまり、急深なのか遠浅なのか)が分かるのである。


サーフでは「サーフを読む」ことが重要。一見どこも同じように見えるサーフだが、注意深く観察すればどこにキャストすべきかが分かるだろう。
 例えば、ほとんどショアライン沿いで波がブレイクしている場合、そのビーチはすぐ先に(おそらくは砂浜との境界線から15ft以内に)ディープを控えたかなりの急深であるはずだ。こんなシチュエーションでは、キャストすべき場所は遥か20ヤード先ではなく、すぐ目の前の急深なのである。
 しかし、仮にこのようなホットスポットを見つけることができたとしても、その場所がいつでも同じ状態にあるとは限らない。サーフフィッシングの面白さは、常に変化し続けるコンディションにこそあるのだ。月齢や潮の満ち引き、潮流、風など、様々な要因によってボトムの形状は激しく変化している。つまり、前回良かった場所が次回も良いとは限らないのである。

 したがって、一カ所にこだわるのではなく、移動しながら広範囲に釣ることが大切になってくる。私が南カリフォルニアのホームウォーターを釣る場合には、約2時間のうちにハーフマイル(800m)もの距離を探るのが普通だ。ただし、オフショアの魚たちのように、バードパーチはスクーリングする傾向があるので、一度ストライクがあった場所では粘ることも必要になる。1尾いれば、必ずもっといるはずなので、そのエリアにキャストを繰り返してみる価値は充分にある。

タックル〜Fly Tackle〜
クラスティペットだけのショートリーダーに
ファストシンキングSTを合わせる。


 特に専用のタックルを必要としないのも、サーフフィッシングの美点であろう。前述したように、パーチとコルビナは決して大きな魚ではない(コルビナのアベレージは2Lb、大型で4Lb)ので、ヘビーデューティーなタックルは必要ではない。ほとんどのコンディションでは、8番タックルが最適だ。もしも無風で、波が穏やかなら、6番まで落とすこともできる。

サーフでは、ビリー・ペイトやフィンノールなどの高級機は必要でないばかりか、実践的でもない。優秀なドラッグの付いた中価格帯のリールがベストだ。

 さらに、ソルトウォーター用の高級フライリールは必要でないばかりか、実践的でもない。まず第一に、バードパーチはグッドファイターではあるものの、バッキングを引き出すほどのパワーは持ち合わせていない。コルビナにしても、波打ち際のロングランで我々を楽しませてくれるが、アンチリバースが必要なほどではない。両魚種ともに、スムースなドラッグ機構の付いたそれなりのフライリールで充分に対応できる。
 第二に、たとえどんなに気をつけたとしても、リールには必ず砂が入り込んでしまう。リールをビーチに落としたりしなくても、砂の粒子の混ざった飛沫がリールに飛べば、結果的には同じことになるのだ。したがって、サーフフィッシングで最も使いやすいフライリールとは、素早く分解でき、簡単に水洗いできるタイプである。ちなみに、私のフェイバリットは、オービスの「Battenkill Disc8/9」だ。
 リールに対してあまり多くが要求されない一方で、ロッドに関してはかなりシビアになる必要がある。時に、アゲインストの強風に対してまともにキャストしなければならないこの釣りでは、ロッドのキャスティング性能は要とも言うべき要素である。ケチらずに、有名メーカーの製品をチョイスすべきだろう。オービスの「Power Matrix」8番は、特にサーフでの難しいコンディションの下での使用を考慮して、ルー・タボリー(アメリカ東海岸におけるサーフフライフィッシングのエキスパート)と私がデザインしたものだ。


大潮の干潮時にはこうしたボトムの変化を見ることができる。チャネルのエッジは、あらゆる捕食魚にとって重要なフィーディングエリアである。
 サーフにおいて最も使いやすいフライラインとは、ファストシンキングのシューティングヘッドである。シューティングヘッドなら、風があってもキャストしやすく、ファストシンキングなら、フライを素早くボトムへとプレゼンテーションできる(バードパーチとコルビナがボトムで捕食する魚だということを思い出してほしい)。
 ホットスポットであるボトムの落ち込みなどは、水深にしてもせいぜい10〜12ftとそれほど深くはないが、サーフというシチュエーションにはフライラインの沈みを邪魔する波という要素がつきまとう。私などは時にレッドコアのシューティングヘッドを使用しているくらいだ。レッドコアのシューティングヘッドは、他のどんなフライラインよりも素早くボトムのフィーディングゾーンへとフライを届けてくれるからである。加えて、普通のフライラインに比べて硬いため、波に揉まれてもあまりグニャグニャせずに真っ直ぐな状態を保ちやすいのだ。

 リーダーに関してはシンプルそのものだ。本当に必要なのはクラスティペットだけである。8〜12Lbテストがちょうどよいだろう。これより細いラインを使うこともできるが、砂との摩擦には注意しなければならない。
 長さは短いほうがよい。私は2&1/2ftを標準にしている。あまり長いリーダーは、風の中でキャストした時にうまく伸び切らないばかりか、フライの沈みもそれだけ遅くしてしまう。フライをできるだけ素早く沈めるためには、ショートリーダーこそがなによりなのだ。
 フライラインとの接続は、クラスティペットの一方をビミニツイストし、できたダブルラインをさらに半分に折り曲げてダブルオーバーハンドノット(サージョンズ・ノット)でループを作る。このループをシューティングヘッドのエンドループに接続すればOKだ(ループ・トゥー・ループを用いる)。
 たいていの場合、私はバットセクションを省略して、クラスティペットを直接シューティングヘッドに接続している。シューティングヘッドの後ろに接続するランニングラインには、サンセットの「Amnesia」40Lbテストを使用している。この製品はキャストもしやすく、絡みも少ない。

フライパターン〜Fly Patterns〜
イミテートではなく、シミュレートサーフという
過酷な環境を逆手にとり
曖昧さの中にリアリティーを演出する。


 バードパーチとコルビナが捕食するエサの90%がサンドクラブで構成されているため、フライはこの爪の大きさほどのカニをシミュレートしてタイイングする。イミテートではなく、「シミュレート」という言葉を使ったのには、それなりの理由がある。
 サーフという環境は、生物が生きるにはかなり過酷な条件である。川のトラウトと違い、サーフの魚たちには、浮遊物をエサかどうか判断するための時間が限られている。何はともあれ、エサかもしれない何かをとりあえずは口にしてみるという習性は、サーフに生息するほとんどの魚に共通しているのだ。

これがサンドクラブ。南カリフォルニアにおけるバードパーチとコルビナの主食である。フライは、この爪の大きさほどの小さな甲殻類にマッチしたものを使う。


筆者がサーフで使用しているフライパターン各種。上が「サンドクラブ・ライト」、右下が「サンドクラブ・ダーク」。どちらも筆者のオリジナルパターンだ。
 したがって、正確なイミテーションは必要ではない。サイズと形、色さえサンドクラブに似ていれば充分なのである。ゴムでできたサンドクラブそっくりのイミテーションは、本物と見間違うばかりの出来栄えだが、私の40年に及ぶ経験のなかで、このフライを使ってバードパーチやコルビナが釣れたという例はまるで聞いたことがない。
 私がいつも使っている3つのパターンは、決してソックリではないものの、どれも効果的だ。そのうち2つは、その名も「サンドクラブ」という名で、ライトとダークの2パターンがある(どちらも、レフティー・クレーの著書“SALT WATER FLY PATTERNS”p63に紹介されている)。もうひとつは「ビーチバグ」というパターンで、こちらはオービスの通信販売で手に入る。この他にも、ウーリーワームやコメットフライなどのアトラクター系(特にオレンジやレッド、イエローといった派手な色のもの)も有効だ。フックサイズは、口の大きなバードパーチには#2〜1/0、コルビナには#2〜6を使っている。

 ストリッピング・テクニックは両魚種とも同じ方法を用いて構わないのだが、その時々の状況に応じてリトリーブを変えたほうが、しばしばよい結果が得られることは確かだ。例えば、潮の流れがかなり強い時などは、ストリッピングなどまったく必要ないことさえある。波の中でただ泳がせているだけでストライクを得ることができるのである。だが、通常の場合は、1回に5〜6インチ引くだけの素早いショート・ストリッピングが効果的だ。このショート・ストリッピングに時折短いポーズを加えると、さらに効果は増す。

ギア類〜Auxiliary Gear〜
ストリッピング・バスケットとネオプレーンのチェストハイで完全装備。
ウェーディングは膝まで。


 ラインをストリップすれば、それは必ず足下に落ちることになる。もしも、これが開けたボートのデッキ上であれば、何も問題はないのだが、サーフのようなジャクジー状態のところへラインを落としていけば、ラインはたちまちスパゲッティーのごとく絡み合ってしまう。これを防ぐためには、どうしてもストリッピング・バスケットが不可欠になる。市販されているバスケットの中で使いやすいのは、オービスの「TangleFree Shooting Basket」だ。もちろん、プラスティックの皿入れなど(キッチンにあるヤツだ)を利用して自作してもいい。サーフというシチュエーションでは、私自身は深めのバスケットが好みなので、プラスティック製のゴミ箱を利用している。深さは15インチ(約38cm)、口の幅は7インチ(約18cm)で、サイドの平らな部分が体にちょうどフィットして使いやすい。深めのバスケットは、ラインが飛び出るのを防いでくれるのだ。

 比較的温暖な南カリフォルニアにおいてさえ、夏を除いて、海水は相当に冷たい。長い時間ウェーディングするとなれば、なおさらのことだ。チェストハイは必需品である。砂が入り込まないブーツ一体型のネオプレーンタイプがお薦めである。
 最後に、サーフを釣る際は注意を怠らないように気をつけたい。どのような状況でも、膝より上にウェーディングする必要はまったくない。サーフに生息するほとんどの魚種は、かなりショアに近いエリアにいるものだ。風の中で60ft(18m)の距離をキャストすることができれば、事足りるのである。それよりも、急深や穴などに足を踏み入れたり、波で足をすくわれたりしないように気をつけることのほうが重要だ。
 サーフという厳しいコンディションに負けないだけの不屈の精神さえあれば、フライロッドによるサーフフィッシングは、きっと新しい種類の興奮を与えてくれるはずだ。

ラインバスケットは絶対に必要不可欠。写真はオービスの製品。台所用の皿入れやゴミ箱などを利用して、自分の使いやすいものを作ってもいい。


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