ゲームフィッシング紀行(2)黒潮洗う本州最南端の町串本
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| 冷水塊と黒潮との関係がカギ |
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串本におけるオフショアーフィッシングは、次に述べるような対象魚をメインターゲットとして行われる。すなわちカツオ、クロマグロ、メバチ、ビンナガ、キハダマグロ、クロカジキ、シロカジキ、マカジキ、オキサワラ、シイラなどである。もっともいくら豊かな串本の海とはいえ、こうした魚たちが年間を通して釣れるわけではない。沖縄あるいはもっと南の海では、水温が年間を通じて高く、変動が少ないため、そこに住む魚たちもある程度の変動はあっても一年を通じて釣れることが多い。 |
| しかし、串本はいくら「常春の国」とはいっても、やはり温帯域のフィールドである。串本の年間を通じての平均水温は約17.5度、冬の最低水温は14度台、最高水温は28度台である。もっともこれは沿岸での水温である。黒潮に近い沖合いはもっと高水温になっているのが普通である。串本沖を流れる黒潮は大体岸から20〜50マイル位を流れるのが普通である。といっても、この距離は決して一定しているわけではなく、絶えず変化しており、その流れ方は主に遠州灘沖に数年のサイクルでできる冷水塊の存在と位置、大きさに影響されている。串本沖での黒潮の流れ方は、直進するN型、大きく南へ蛇行するA型など幾つも型があるが、先に述べたターゲットたちが、我々フィッシャーマンの手の届くところにやってくるには、この黒潮が岸から近いところを流れていなければならない。いくらターゲットが黒潮に乗ってやってきても、例えばそれが岸から50マイルも60マイルも沖合であれば、いくらりっぱなボートを所有していても、いわゆるアマチュアの領域を越えてしまうことになる。だから串本でゲームフィッシングをやるなら、この黒潮の流れの位置や方向に無関心ではいられない。 黒潮を遠ざける原因となるこの冷水塊は、数年に一度の割合で発生したり、消滅したりしている。ここ10年の発生と消滅の状況を見ると、1986年11月に発生した冷水塊による大蛇行は、1988年9月まで続き、1989年12月に発生した蛇行は1991年5月まで続いていた。発生すると約2年間は続くことが分かっている。 こう見ると、現在はオフショアフィッシングにとってはうってつけの状況であると言えそうだが、漁業では黒潮が近いことと漁の好不調は必ずしも相関しないそうである。海はそれほど単純ではないのである。当然釣りにとっても魚が釣れる、釣れないはそれだけが影響するわけではないから、好条件が揃ったからといって、必ず大漁できるわけではない。もっともこれはベテランアングラーなら良くご存じのはずであるが!?。 オーナーボートによる釣行 オフショアーフィッシングの実際は、トローリングとキャスティングゲームに分けられるが、これらをする場合、当然ながらボートが必要となる。ボートについては自前、いわゆるオーナーボートと、チャーターボートがあるが、まずはオーナーボートの場合から述べてみよう。ここ串本は前述のように釣り場が近いので、大型のボートは必要ないというメリットがある。しかしいくら釣り場が近くても、串本沖は昔から海の難所と呼ばれる所で、黒潮に伴う激しい潮流が絶えず渦巻き、また台風のメッカでもある。もしボートになんらかのトラブルが発生したら、そのまま遥か彼方に流されてしまう場所であることも忘れてはならない。それこそ内海の感覚でいては、みずから事故を招くようなものである。 |
| ここで楽しくそして何よりも安全にゲームを楽しむためには、やはりある程度の大きさのボートが必要になる。串本は大阪や名古屋といった大都市圏からいずれも150kmから200km程度離れている。在来特急で来れば現在は最も近い大都市、大阪から約3時間の距離であるが、船でとなるとこの距離は決して近い距離とは言えない。陸から釣り場が近くても、利用者の多くが住む大都市からは遠い釣り場なのである。これらの都市から串本までこの距離を余裕をもって航行するには当然ながらそれ相応の大きさのボートが必要となる。大きさからすれば最低27ftクラスで、2機掛けが理想である。 |
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| ただ串本近辺の港を母港として利用すれば、釣り場が近いという長所を目一杯利用することができる。串本には残念ながらマリーナと呼べるものはないが、近い所では、田辺市周辺に幾つかのマリーナがある。ここからだと距離的にも充分日帰りの範囲になり、ボートも特に大きなものは必要なくなる。朝大阪を出て、釣りを楽しんで、夜には戻るという離れ業も可能だろうが、天候の急変とか、機関のトラブルといったことと、串本の地理的な位置とを考え合わせると、やはり先に述べた最低条件は確保したいものである。もっともスモールボートでトロフィーをという人にはおせっかいかもしれないが。 ただ普通こうした大都市圏から串本までやってきて、そこで釣りをしようと思えば、日帰りの予定は組めない。最低でも一泊二日のコースとなる。そうした場合、夜間船を停泊する場所が必要となる。串本周辺には小さな港が数多くあるが、この中でも安全で入港しやすいのが串本港である。周辺の小さな漁港はいずれも規模が小さく、しかも漁港として整備された港であるから、よほど周辺の地理に詳しいとか、緊急であるとかいった場合以外はお勧めできない。入港時における地船、または海底への接触、あるいは漁民とのトラブルなどを考えると、こうした港をあえて使用するメリットはほとんどないと言える。特に夜間の利用は灯台などの整備が充分されていない港が多いので、危険極まりない。また入港しても買い物や給油等に困ることが多い。 串本港は名だたる漁港であるが、幸い串本港内には串本漁協の好意により岸壁の一部がプレジャーボート専用に解放されている(図1参照)。ここだと、少々の荒天でも安全に船を係留することができ、しかもホテルや飲食店、商店などがいずれも近くに集まっているので、不便を感じることがない。また給油所もすぐ横にある。ただし、ここには地元の遊漁船も多く係留されているので、出入港の際に係留船のアンカーロープを切断したり、他船に接触したりというトラブルの可能性が出てくる。くれぐれもトラブルには注意し、もし近くの船に人がいたら、入港場所などについて聞いてみたほうが良いだろう。空いていると思った場所が、実は他船の係留場所だった場合、トラブルになるからである。この辺りにとめてある船は、ほとんどが常アンカーといってアンカーを入れっぱなしにしており、出港の際にはそれにブイをつけて浮かしてある。入港の際はかならずこれを確認し、ブイのある場所には船をつけないようにしなければならない。またこの港内は漁船の数が多く、港内での航行は必ずデッドスローを厳守して頂きたい。 ここ串本では毎年JGFAの後援するビルフィッシュトーナメントが開かれているので、「カジキ釣り」には皆理解がある。またケンケンと呼ばれる曵き縄漁の盛んな土地柄のこと、町では思わぬこぼれ話に預かれるかもしれない。せっかく港に入ったのに、宿泊はおろか買い物も給油もできないという憂き目にあったひとは多いはずである。ぜひ参考にして貰いたいものである。 またオーナーボートの方のために、串本周辺を航行する際の注意事項を図にしておいた(図1)。まずもっとも注意しなければならないのが、潮岬沖の急潮である(A)。ここは黒潮の流れに伴う潮が、海底から急激に持ち上げる瀬にぶつかって激しい渦を巻くところで、難所として知られている。特に潮の速い時や、うねりが入っている時には、危険な三角波がでる時がある。ただこの発生場所は岸よりの数百mに限られているので、遠目にみてそのような波が出ているときは、沖側を迂回したほうがよい。ただこの辺りは日本でも有数の船の往来の激しい所なので、充分な注意が必要である。 |
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| その他の注意点としては、沿岸に仕掛けられた定置網が挙げられる。図に示したように、串本周辺には幾つもの大敷網と呼ばれる大型の定置網が仕掛けられている。これらの網は非常に大型で堅牢にできているので、もし誤って船を突っ込んだら、綱のロープを切る位の怪我ではすまないのは明白である。たちまち航行不能の事態は考えられるので、充分な注意が必要である。またこの辺りでは初夏や秋に、あちこちでトビウオの刺し網漁が行われる。特に多いのは先程の潮岬の先端付近(A)であるが、この漁は大変に長い網を海面に延ばし、潮の流れに乗って船と共に流してゆくという漁法なので、事情の分からないプレジャーボートにとっては大変やっかいで、実際トローリング中のボートとのトラブルも何件か起きている。この漁法の場合、網と船が一緒になって流れており、船と逆の網の先端には必ず大きな旗が立っているので注意していれば回避は比較的容易である。ただこうした漁船が多数出漁している場合は、素人には見極めが難しいので、決して無理をせず、面倒でも大回りしたほうが良いだろう。この他、串本沖は、日本有数の航路なので航行には充分注意しなければならない。プレジャーボートの接触事故は幸いこれまであまり例がないが、漁船と大型船の接触事故はこれまで何度も起きている。特にオートパイロットの使用時に事故が多いようなので、ワッチは慎重に行ってほしい。 この他、串本港への出入港の際、特に気をつけていただきたいのが、大島の水道部である(B)。ここは大変に狭い水道であるので流れが大変に速く、おまけに全ての船舶が集中するので非常に危険である。特に大型船の出入港時や朝夕の漁船の往来の激しい時間帯の航行には厳重な警戒が必要である。現にここでは多くの衝突事故が発生しており、その中には死亡事故も含まれている。 チャーターボート利用法 チャーター船の場合には、そうした意味では面倒臭い心配は全くいらない。関西有数の釣り場を持つ串本には磯渡しの船以外に、数多くのチャーター船がある。ただこれら全てが、いわゆるゲームフィッシングに理解があるわけではない。これらの船の大半はいわゆる沖釣り一辺倒の船だ。だが、中には同時にトローリングを積極的にやっている船もある。しかし残念ながら、キャスティングをメインにやっている船は今のところ見当たらない。ただ人数がそろえばキャスティング中心の釣りでも、船は出してくれるようである。当然他の釣りとの相乗りは難しいので、可能かどうかは直接問い合わせてみるしかない。もっともそうした釣りがまだ普及していない串本では、アングラーが主体となって動かないと黙っていてもよい釣りはできない。また、このように串本ではまだ本格的なゲームボートはないので、もしチャーターできても、普通の漁船となる。どの漁船もケンケン漁(曵き縄漁)のためのアウトリガーをとりつけてあり、キャスティングゲームの場合はこのリガーが邪魔になってしまうのが難点である。だからこうした船を利用する場合は事前にこれを外して貰うように頼むか、あるいは楽にキャスティングできるように、極力少ない人数でチャーターするかしなくてはならない。 トローリングに関しては、理解のある船も多く、特にここでビルフィッシュトーナメントが開かれるようになってからは、JGFAルールを理解して、それに合った操船をしてくれる船長も増えてきている。つまり極太のラインを用いた手釣りのいわゆる漁師式の釣り方でなく、規格ラインとロッド&リールを用いたゲームである。ご存じのように、前者は多くの漁業者が用いる方法であるが、この方法に合った操船では、規格ラインを用いたゲームは全く成り立たない。しかし、こうした方法に全く縁がない船長にいきなりそうした操船を求めるのは、無理と言うものである。ところが一度でもそうした経験があれば、その船長の操船テクニックは全く違ってくる。その点で、当地でビルフィッシュトーナメントが毎年開かれ、それに多くの船長が参加しているということは、大きなメリットとなっている。 トローリングのチャーターを受け入れている船長の中にはいわゆる遊魚専門の船長もいるが、普段は漁業を営んでいる船長も多くいる。そうした船長たちと話せば、またおもしろい発見もあり、最新の情報も手に入るかもしれない。 串本でのオフショアーフィッシングのターゲットは、先に述べたような魚たちだが、これらのベストシーズンは、カツオ(4月〜6月)、マカジキ(5月〜9月)、クロカジキ(7月〜9月)、キハダ(3月〜7月)、シイラ(5月〜10月)、ブリ〈ハマチ〉(9月〜12月)、カマスサワラ(6月〜9月)となっている。まだまだあまり一般的ではないが、11月〜5月ごろだと、磯周りでヒラスズキが狙える。この他串本周辺では、クエやカサゴ、アカハタといったいわゆる根魚や、ヒラメ、マゴチ等の底物、それにカンパチやヒラマサといった回游魚も多い。しかし、餌釣り以外はまだまだ手がつけられていない状態である。今後、バーチカルジギングやキャスティングゲーム等が積極的に試されれば、また新たなターゲットが浮上してくる可能性も高い。 |
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大物ゲームは何も南の海だけの専売特許ではない。遠くにばかり囚われないで、視点を変えて見直せば、我々の足元のごく近い所にも、意外な好フィールドがあるものである。我々が住んでいる日本は世界でも類のない海洋国だということを忘れてはいけない。大事なのは、人まねではなく、新たな物を掘り起こすパイオニア精神である。串本は関西では古くから磯釣りで極めて有名であった。しかし、今こうして新しいゲームフィッシングのフィールドとして見直せば、また新しい可能性が次から次へと生まれてくる。我々は、もう一度自分達の身の回りのフィールドを、新しい目で見直す時期に来ているのではないだろうか。 遠くて近いフィールド串本の今後に期待したい。 |
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