SALMON FISHING

北海道室蘭沖の
サーモンフィッシング

リポート/石丸益利
写真・構成/編集部

取材協力/エンルムマリーナ室蘭、北海道ヤマハ、ヤマハ・マリンクラブ

北米では淡水海水を問わず人気の高いサーモンフィッシングだが、日本のサケを取り巻く諸々の状況はアングラーにとって決して恵まれているとは言い難い。内水面においてサケ釣りが全国的に禁止されていることは周知の事実であるが、海水面においてもまた漁業調整規則等により何らかの規制がされている。したがって、日本のサケ釣りを楽しもうということになると、こうした規制に抵触しない場所を選ぶことが第一歩になる。
今回取材した北海道の室蘭沖は合法的にサケ釣りができる日本では数少ない場所のひとつである。そこで、北米のサーモンフィッシングではもはや定番化しているダウンリガーを室蘭に持ち込み、日本のサケに北米流の釣法がはたして通用するかどうか挑戦してみた。

北海のゲームフィッシュ

 以前、小樽マリーナで行なわれたヤマハスポーツフィッシングスクールに行った際に、スタッフの方々と今後の北海道でのスポーツフィッシングの普及についてミーティングを行なったことがある。その時に北海道ではカジキやカツオ、シイラといった回游魚が極めて少ないため、他の地域で行なうようなスクール内容と違ったことができないだろうかということになり、そこでサーモンをスポーツフィッシングのターゲットとして考えられないだろうかということになった。海外ではサーモンフィッシングはとてもポピュラーな釣りであるわけだが、国内では地域的にも北海道と本州の一部でしか行なえず、またこの魚については県条例や漁業調整規則等により制限がつけられている場合が多いので充分に注意しなければならない。北海道も含め国内では内水面でのサーモンフィッシングは一切禁止されており、また海であっても、たとえば河口から半径2km以内では釣りは行なえないなどと決められている。当然のことながらアングラーはこれらの制限に従ってサーモンフィッシングを行なわなければならない。その点を考慮して、北海道ヤマハ(株)の方に釣り場と時期について選定をお願いすることになった。そして、今回の室蘭でのサーモンフィッシングとなったわけである。


 今年の噴火湾はサーモンの回游が非常に多く、新しいスクールが次々に入ってきており、サーモンの釣れ具合はとても順調だということだった。今回ヤマハでセッティングしてもらった釣り場は、エンルムマリーナ室蘭沖のポイントで、ボートはこのマリーナをベースにしているYAMAHA PC-36を用意していただいた。エンルムマリーナは小樽マリーナと同様に第3セクターで運営されているマリーナである。マリーナ沖のポイントと言っても実際にはマリーナの外側の堤防を出た所で、出港してわずか5分ほどの距離で充分にサーモンのスクールと遭遇することができる。

マリーナを出てほんの数分。室蘭八景のひとつ「絵鞆岬」から先には景勝地が続く。「銀屏風」「地球岬」「金屏風」と、次々に変貌する岩の形が美しい。


エンジンを停めてのキャスティングが地元の釣り方。特にサーモンのジャンプを見つけてから、そこへルアーをキャストするという方法が効果的だった。


スプーン+タコベイト+サンマの切身というのが地元のスタイルだ。意外とサンマの切身は重要!
地元の釣り方は2つ キャスティングとドリフティング

 到着した翌日は、朝5時半にエンルムマリーナを出港。堤防をかわしてすぐの所からフィッシングをスタートすることになった。マリーナ沖では既に多くのボートが釣りを行なっていて、我々の周りのボートでは時おりサーモンをランディングしている様子がうかがえた。
 地元アングラーの釣り方は大きく分けて2通りの方法がある。スプーンを使ったキャスティングと、仕掛けを沈めてエンジンを停止したボートを潮流にのせて流すドリフティングである。スプーンによるキャスティングは、10〜13ft程度のスピニングロッドに中型のスピニングリールをセットし、リールには12〜20Lbクラスのラインを巻いておく。スプーンは写真にあるように30〜50gの大型のもの。それにタコベイトのスカートと丸セイゴかアキアジ鈎をケプラーのハリスで2本付けたものを使用する。スプーンのカラーはゴールドもしくはシルバーが一般的なわけだが、ルアーの一部分(スプーンの表面もしくはスカート)に必ずレッドのアクセントカラーを入れるようにする。サーモンフィッシングの場合、これがあるのとないのとでは釣果に大きな違いが出るのである。それから北海道のサーモンフィッシングでは、さらにサンマの切身を付けるのがポピュラーな方法となっている。これは時としてレッドカラーのアクセントよりも重要なようで、アタリが遠くなった時に新しい切身に付け替えるとすぐにヒットすることがしばしばあった。サンマの切身は1本をそのままブツ切りにして使うよりも、少々手間がかかるが一度3枚におろしてからそれをタンザクに切って使ったほうが、ヒラヒラとしたアクションが生じるのでより効果的である。

 スプーンを使ったキャスティングでの狙い方にもいくつか方法があるが、通常はキャストしたスプーンをある程度カウントダウンさせてからゆっくりとリトリーブしてくる方法である。カウントダウンさせる時間はその日のサーモンの泳層によって変化させるわけだが、とりあえず最初は海底近くまで沈めてからゆっくりと巻き上げてきて、どの位の深度でヒットしてくるか探る必要がある。また、カウントダウンの際に底がとれずにルアーを海底で引きずってしまうと、根がかりしたりカジカのような根魚がヒットしてしまう。糸フケに充分注意を払わなければならない。潮の流れが早い時は、キャストしたスプーンをカウントダウンさせ、ラインが潮流で張った状態にしてアタリを待つ。この場合にも糸フケとロッドティップの曲がり具合や動きをチェックして、ルアーが海底に着いていないか確認しなければならない。

 ボートの周辺でサーモンのジャンプを見つけた時は、すかさずその波紋の中にスプーンをキャストし、着水と同時かややスプーンを沈める位でリトリーブをするとかなり高い確率でサーモンがヒットしてくる。しかし、サーモンはボートにあまり接近してこないので、キャスティングの際にかなりの遠投力と正確さが必要になる。
 ドリフティングによる釣り方の場合、ロッドはボートのロッドホルダーや竿掛けを使って置竿のスタイルで行なうため、キャスティング用ロッドよりも多少スローアクションのものが良いだろう。市販のロッドではダウンリガーロッドもしくはムーチングロッドなどがこのスタイルの釣り方には適している。

 仕掛けは、キャスティング用のスプーンをそのまま使うこともできるが、潮流の速さによっては大型スプーンではアクションが出にくいことがある。そこでレイクトローリングで使われるドジャーを付けると、潮流が遅い時やボートがローリングした時でも水中でキラキラと光りながら大きくアクションするので非常に効果的である。ドジャーのカラーはシルバーが一般的で表面にリフレクトシールなどを貼っておくとより集魚効果が高い。ドジャーを使用する場合、ドジャーからとるリーダーは40〜60cm位とあまり長くする必要はない。リーダーの先端にはキャスティング用のものよりも小型で肉薄のスプーンでフックにタコベイトとサンマの切身を付けたものか、もしくはタコベイトとサンマの切身だけのコンビネーションを付けると良いだろう。ドリフティングの時に仕掛けをどの位深く沈めるかを決定するには、魚探を使ってサーモンの泳層を見つけるか、同時に数本のロッドを入れる際にそれぞれの仕掛けのタナを変えてみて、どの深さでヒットするかを知るのも良いだろう。

ダウンリガーでチャレンジ

 まず我々が最初に試してみたのは、今回のテーマのひとつであるダウンリガーを使ったトローリングでのサーモンフィッシングである。使用したダウンリガーはCANNON社のDT-2(コンピューター)とUT-4(手動式)の2タイプで、それらはジンバルマウントを使ってYAMAHA PC-36にセットした。ここエンルムマリーナ沖のポイントは水深が20〜30mとそれほど深くはないので、本来なら10Lb以下のウエイトで充分なのだが、今回のPC-36には360HPのエンジンが2基搭載されているため、スローがあまり効かず、12Lbのヘビーウエイトで仕掛けを確実に沈めるようにした。それぞれのダウンリガーにはソルトウォーターリリースとスタッカーリリースをセットして、同時に4本のロッドを使ってトローリングを行なった(下図参照)。今回使用したロッドは長さ8'6"のダウンリガーロッドDS-86LとDS-86M、リールはPENN40GLSとABU7000Cにそれぞれ30Lbと16Lbテストラインを巻いたものを用意した。



1つのダウンリガーに2本の仕掛けをセット(右上図参照)、計4本を流す。セットバックを長めにとって(左上図参照)、超スローで引っ張るのだ。

 まず初めに魚探で泳層をチェックしてみると水深15m付近にサーモンらしい魚影が映った。そこで、4本の仕掛けを10〜18mの深さにセットしてみた。ところがやはり予想通りボートのスピードが速過ぎるためブローバックが大きくなりすぎてしまう。そこでエンジンをシングルにして、さらに減速機を使ってスピードをスローダウンしてもらいやっと適当な速さを得た。とりあえずセットバック(ラインリリースからルアーまでの長さ)を15〜20mにしてルアーを流してみたが、全くアタリがこなかった。再度魚探をチェックしながら度々ウエイトの深度を上下に変更してみたものの相変わらずアタリがない。どうしたものかとキャプテンに聞いてみたところ、この辺ではサケはボートのエンジン音を嫌うと言われているので、いつもはエンジンを停止して釣りをしているのだと言われた。そこでルアーをボートから少しでも遠くへ離そうと、セットバックの距離を50mに延ばしたところ、暫くしてやっとサーモンのストライクをキャッチすることができた。しかし、その後再びアタリがこなくなってしまったが、周りのボートでは相変わらずサーモンが釣れていた。とりあえず我々もサーモンをもう少し釣ろうということになり、スプーンのキャスティングによる釣りを行なうことにした。

ダウンリガーでは、セットバックを長くとるか、エンジンを停めて潮に流すか、の方法が有効だった。


ドリフティングによるダウンリガーが正解か!?

 時間が昼近くになっていたためか、サーモンのジャンプはほとんど見られない。そこで、スプーンを一度海底まで沈めてからゆっくりとリトリーブしてくると途中でゴツンと重々しいストライクがあり、サーモンが体をくねらせながら上がってきた。時として海底までスプーンを沈めるとコツコツと小さなアタリがあり、ただ重いだけで上がってきた。
 その後キャスティングを続けて数尾のサーモンをキャッチしたところで再び潮の流れが速くなってきたので、今度はボートをドリフティングしながらダウンリガーを入れることにした。ラインには0/0サイズの小型ドジャーを付け、60cmのリーダーの先にサンマの切身とタコベイトをセットしたレイクトローリング用スプーンを30mほどセットバックさせて水深10mに入れた。セットバックしたラインは潮の流れでほぼ水平になり、ドジャーもスプーンもトローリングをしている時のように良くアクションが出ていた。その結果、仕掛けをセットして間もなくサーモンのヒットがあり4kgのオスをランディングすることができた。もしも地元の人が言うようにサーモンがボートのエンジン音を嫌うのであれば、この方法で仕掛けを狙ったタナへ確実に入れることによって効率良くサーモンをキャッチできるはずである。


 海でのゲームフィッシングの対象魚が比較的少ない北海道では、サーモンは非常に重要なターゲットである。特にこの魚は沿岸部でも手軽に釣れるので船外機の小型モーターボートでも充分に狙えるし、ヒットする魚のサイズも大きく、しかも当然のことながら食べても美味しいところが魅力である。しかし、日本におけるこの釣りの歴史は浅いので、まだ釣り方が完全に確立されていない。そこでダウンリガーをはじめとした新しい方法でトライしてみるのも楽しみである。
 今後、我々がこの素晴らしいターゲットであるサーモンを大切に育てていくためには、無制限な捕獲は控え必要以上の魚はリリースする気持ちが大切だ。また当然のことながらプレジャーフィッシングの立場として定められた条例や規制を厳守して、いつまでも北海道の海でサーモンフィッシングが楽しめることを願っている。

1798年英船「プロビデンス」の船長が駒ヶ岳、有珠岳の火山を見て「Volcano Bay」と呼んだのが噴火湾の由来。


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