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「海のダイヤ」クロマグロの稚魚、完全養殖成功
「海のダイヤ」と呼ばれ、マグロ類の中でも最高級魚として知られるクロマグロの養殖研究に取り組む近畿大水産研究所(本部・和歌山県白浜町)が、世界で初めて完全養殖に成功した。5日発表した同研究所によると、受精卵を人工ふ化させ成長させた成魚が、同日までに産卵。実験魚の生活史の1サイクルがすべて飼育下で行われた。今回、産卵したのは95〜96年に人工ふ化した体長約135〜200cmの成魚20匹の一部。6月23日〜7月3日、約100万粒を産卵、うち約3分の2がふ化、体長5〜6ミリにまで成長している。クロマグロは寿司だねや刺身として高い人気があるが、漁獲高はマグロ類全体のうち数%程度で、1匹当たり500万〜600万円の高値で取引されることもある。
苦闘30年で夢実現―熊井教授
クロマグロの完全養殖に成功した近畿大学水産研究所(本部・和歌山県白浜町)で、研究の中心となった同大水産学科教授の熊井英水所長(66)は国内のマグロ養殖の第一人者で、約30年かけて「夢」を実現した。「今回生まれた卵は熊野の海が育んだ新しい生命。研究のヒントをくれたのも熊野の漁師だった」と感謝している。
熊井さんが本格的に研究に着手したのは、水産庁のマグロ養殖プロジェクトに参加した'70年。同研究所は人工ふ化部門を担当し、串本町の大島に研究施設を開設した。海水がきれいで、熊野灘のマグロ漁場に近いことが決め手だった。
研究はつまずきの連続。クロマグロは皮膚が弱いうえ、運動量が多く大量の酸素を必要とするため、短時間でも海水から出すと死んでしまう。沖合の定置網で捕獲したヨコワと呼ばれる幼魚は、大半が2、3日すると死んでしまい、漁師からも「養殖なんて無理」と笑われたことも。
だが、打開策のヒントをくれたのも漁師だった。地元ではケンケン釣りと呼ばれる疑似針を使った一種の一本釣り漁法が盛ん。漁師たちは釣ったヨコワには手を触れずに、水槽に入れて生きたまま持ち帰る。同じやり方で入手したヨコワを使って飼育法法を工夫し、'79年には世界で初めて、いけすの中での産卵に成功した。
これまで、卵が成魚にまで成長する確率はわずか0.1%だったが、衝突死を防ぐため直径30m、深さ10mの円形のいけすを特注するなどの工夫で生存率を高めたことが、成功につながった。
研究者人生のすべてをマグロ養殖一筋にかけてきた熊井さん。「定年まで残り1年となったこの時期に、産卵に立ち会えて研究者冥利に尽きる喜びです」と語った。
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